非核化よりも南北関係改善に進む韓国の事情 なぜ民族愛を強烈に演出するのか

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アメリカ国防情報局(DIA)によると、北朝鮮は現在、核弾頭を最大で60発保有しているとみられる。また、アメリカ中央情報局(CIA)によると、北の核施設は100カ所に上る可能性がある。

北はこれらの施設も包み隠さずに申告するのか。また、北朝鮮には地下施設やトンネルが1万カ所以上あると言われている。野球ボールやソフトボールサイズのプルトニウムやウランを隠すのは容易だが、北朝鮮が全面査察を容認するかどうか。

ボールはトランプ大統領に渡った

今後の米朝協議については、米中貿易戦争の影響が必至だ。アメリカが中国相手にチキンレースのごとく貿易戦争を仕掛けているのは、中国と蜜月を深める北朝鮮へのけん制の意味もある。

中国に強烈な圧力をかけていれば、中国も北朝鮮への露骨な経済支援はできない。それは、北朝鮮に非核化を迫る大きなレバレッジとなっている。とりわけ、3月の中朝首脳会談後、中国が事実上の制裁緩和に動き、中朝国境でヒトやモノの往来も増えていると伝えられる中、なおさら重要だ。

現にトランプ大統領はポンペオ国務長官の訪朝中止を明らかにした8月下旬のツイッターで、「アメリカが貿易問題で中国に強硬な姿勢を示しているため、中国はかつてのように(北朝鮮の)非核化のプロセスを支援しないだろう」と指摘。ポンペオ氏の次の訪朝は「貿易問題が解決した後のタイミングが極めて可能性が高い」と記した。

アメリカ通商代表部の通商代表補代理や在日アメリカ商工会議所会頭などを務めたグレン・フクシマ氏は最近都内で行われた講演会で、「トランプ大統領は11月の中間選挙を前に、今は中国を脅している真っ最中だ」と述べている。

金委員長は、年内にはソウルを訪問する意向を示し、南北関係改善に突き進む構えだ。しかし、米中貿易戦争を続行するトランプ大統領は、金委員長と近く再会談する判断をするかどうか。つまり、中間選挙を前に、金委員長と再びド派手な政治ショーを行うことが得策と考えるか。あるいは、中国への強硬路線の続行を何より重視し、金委員長との再会談を先送りにするのか。ボールはトランプ大統領に渡った。予測が難しい同大統領の次の一手に注目が集まる。

高橋 浩祐 米外交・安全保障専門オンライン誌「ディプロマット」東京特派員

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たかはし こうすけ / Kosuke Takahashi

米外交・安全保障専門オンライン誌『ディプロマット』東京特派員。英国の軍事専門誌『ジェーンズ・ディフェンス・ウィークリー』前特派員。1993年3月慶応義塾大学経済学部卒、2003年12月米国コロンビア大学大学院でジャーナリズム、国際関係公共政策の修士号取得。ハフィントンポスト日本版編集長や日経CNBCコメンテーターなどを歴任。朝日新聞社、ブルームバーグ・ニューズ、 ウォール・ストリート・ジャーナル日本版、ロイター通信で記者や編集者を務めた経験を持つ。

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