日本人が知らない南北首脳会談「意外な成果」 南北トップ2人が放った渾身の一打とは
北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長は今年前半、「朝鮮半島の完全な非核化」に触れた2つの合意文書に署名している。だが、具体策が示されることはなかった。
4月27日の南北首脳会談による板門店宣言、および6月12日の米朝首脳会談で発表されたシンガポール共同声明のいずれも、漠然と非核化目標をうたうにとどまっている。
驚くと同時に、厄介な「譲歩」
今回、韓国の文在寅大統領は金委員長から具体的な譲歩の約束を引き出し、これを文書化することに成功した。ただ、そこに落とし穴がないわけではない。また、これをきっかけに北朝鮮が自主的に非核化を加速させることもないだろう。
「9月平壌共同宣言」には、具体的な譲歩が2つ盛り込まれている。
1つ目は、6月の米朝首脳会談の直後に示されたおなじみの措置で、北朝鮮北西部の東倉里(トンチャリ)にある西海(ソヘ)衛星発射場を解体するというものだ。今回、新しく出てきた展開は、北朝鮮が各国専門家の立ち会いに合意した点であり、これは評価できる。
2つ目の譲歩は驚くべきものであると同時に、厄介な代物でもある。北朝鮮はあの有名な寧辺(ニョンビョン)の核施設を恒久的に閉鎖する用意があるとしたが、これはあくまでアメリカがシンガポールで交わした米朝共同声明の精神に基づいて相応の措置をとることが前提になっている。
では、それぞれの譲歩は北朝鮮の非核化にとって、どれくらいのインパクトを持つものなのだろうか。以下に分析していこう。
まず、西海衛星発射場の解体で重要なのは、これが文書化された点にある。同施設の解体はこれまで、ドナルド・トランプ米大統領が米朝首脳会談の記者会見で一方的に発表したものにすぎなかった。
この時、トランプ大統領は「ミサイル・エンジンの試験場を破壊する約束を取り付けた」とだけ語り、具体的にどの施設が解体されるのかは明らかにしなかった。米朝首脳会談から数週間後の7月中旬には、北朝鮮分析サイトによる衛星写真の解析から、西海衛星発射場にある液体燃料式エンジンの試験台で部分的に解体作業が行われていることが確認されている。