社内政治に弱い人がわかってない6つの能力 会社も社会も「綺麗事」だけでは回らない

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社内政治においては、相手によって「動かす」のが簡単だったり、難しかったりすることを理解する必要があります。命令権がある自分の部下を動かすのは簡単ですが、命令権がない人や上司、上長、取引先などの立場の強い人を動かすのは容易ではありません。

たとえば、部下を信用していない、自分の思う通りにしか進めたくない上司を納得させるには、部下が単独で説明してもダメです。この場合は、上司と部下だけでなく、先輩、上司との関係が強い上長、関係部門などのキーパーソンを絡ませ、事前に大義名分をつくり、上司を納得させる方法を一緒に考える集団戦に持ち込みます(囲み攻め)。

私は、この方法をよく使っていました。自分が上司を説得する場合には、関係者を集め、自分のアイデアに同調してもらったり、あえて戦略的に反論してもらったり、その反論に自分が完璧に答えるなどの演出を行い、上司に独善的な判断をさせないようにしていました。

評価を独り占めしていたダメ上司を無力化する方法

世の中も会社の中もいい人ばかりではありません。自分の成果だけを考えている上司、上長、自分だけ守られていればよいと思う部下や、保身のために何も協力してくれない他部門の担当者もいるでしょう。

特に上を目指して、自分の成果を追求するような人間は、仕事の成功を自分の手柄にして、失敗を他人に押し付けるようなことも、ときに起こします。

このようなことは、確かにひどいことと思うかもしれません。

しかし、それぞれ個人の事情があり、彼ら、彼女らなりの正義や大義があるのかもしれません。もちろん、パワハラとしてコンプライアンス上問題になる行為は断固排除されなければなりませんが、社会や会社が利益を得ながら活動していく組織体である以上、成果を誰が取り、失敗の責任を誰に持たせるかはあいまいにできない問題であることも事実です。社会も会社もきれい事だけしかない「無菌室」ではないのです。

社会や会社が無菌室でなく、一定の菌がいて、自分に害を与える環境であることを嘆いても仕方がありません。そうではなく、自分に害を与える環境であることを受け入れ、菌に害されない防御策を考えるべきなのです。自組織や部下、自分に害が及ばないようにしていくことが必要です。

ある会社に困った上司がいました。この上司は配下の複数の部下にいろいろ調査をさせて、経営層にとって価値のある情報(売れ筋の商品やサービス情報)を集め、経営層にメールで報告していました。

しかし、この上司は部下に感謝もせず、あたかも自分自身が収集した情報であるかのように経営層に説明していました。これを知った部下は皆怒り、落胆しましたが、上司に苦情を言うことも難しく、また、経営層に直談判することも上司の怒りを買うので得策ではないと考えました。

それでも、このままでは仕事のモチベーションが下がると思った部下の1人である黒沢氏(仮名)は一計を案じました。社内提案制度を利用し、「中堅、若手社員の情報収集力強化制度」として、中堅、若手の社員が社内全体で情報を共有する制度をつくったのです。

その結果、上司が経営層に情報メールを出す価値が薄れ、しばらくして上司は部下に情報収集を命じることがなくなりました。

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