「言った、言わない」で争う営業に欠けた視点 ビジネスで「察してほしい」は通用しない

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日本人はハイコンテクスト文化のため、いちいち説明しなくても、あるいは、説明が分かりづらくても、「私のことを察してくれる」という気持ちが先に出てしまうのは、仕方ない面もあります。ですが、営業マンがミスをしないため、きちんと相手に意図を伝えるため、商談を優位に進めるためには、営業マン自身が工夫をするしかありません。

大事なのは、その場の空気を読んで、あいまいな表現、あいまいな答え方をしないことです。こうした営業マンの対応次第で、「言った・言わない」のトラブルを防ぐことができるのです。

では、この日本人特有のハイコンテクスト文化への対策として、営業マンはどのように日頃の商談などを工夫していけばよいのでしょうか。

「聞き間違え」を避ける4つのテクニック

まず営業マンの心得として、日本人特有のあいまいな表現に流されて商談を進めてはいけません。以下に紹介する工夫を取り入れることで、常に情報が明確な状態でのやり取りに変える必要があります。

1:言葉を繰り返して確認する

お客さまの多くは、社内用語や業界用語を多用するため、慣れない営業マンは理解できないことがあります。商談で、お客さまが複数人参加されると、お客さま同士で、あいまいな表現でやり取りをしていることがあります。お客さまにとっては当たり前の表現であっても、外部の営業マンには、当たり前の表現ではありません。必ず気になった言葉は繰り返して、確認してください。

例えば、お客さま同士の会話で以下のような表現をしていたとします。

ダメな例
お客さま:たしか、A機種は生産予定数が多いはずだよなー。そうそう。

営業マン:なるほど、そうなんですね(明確な生産数が分かっていない)。
よい例
お客さま:たしか、A機種は生産予定数が多いはずだよ。そうそう。

営業マン:生産予定数が多いとは、具体的には何個ぐらいなのですか?

特に数字に関しては顕著なので、ハッキリしていないあいまいな言葉は、必ず相手に具体的な数字を確認しましょう。

2:クローズドクエスチョンで確認する

クローズドクエスチョンとは、「はい」「いいえ」で答えられる質問のことです。対義語として、オープンクエスチョンがあります。これは、「来月発売する商品は、いつ店頭に並ぶのですか?」など、「はい」「いいえ」で答えられない質問のことです。営業マンは、雑談をするとき、お客さまから話を聞き出すときなど、オープンクエスチョンを使うことが多いため、クローズドクエスチョンを忘れがちです。

ですが、物ごとを確認するときは、「クローズドクエスチョン」が大きな効果を発揮します。例えば、飲食店で注文をした後、店員が注文の品を復唱して「以上で大丈夫でしょうか?」と聞くことがあります。これが「クローズドクエスチョン」で確認するという方法で、注文が合っていれば「はい」、間違っていれば訂正するだけです。

営業マンは、商談の最後に必ず「クローズドクエスチョン」で確認してください。

・○○の資料は、3日後、○日の午前中まででよかったですよね?
・○○商品の納期は、来週の月曜日納品になりますが、大丈夫でしたよね?
・次回の打ち合わせは、○日の14時ですね?

などです。

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