日本人に「脱・現金払い」は本当に定着するか 世界に後れを取るインフラ整備と意識

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●クレジットカード、デビッドカード……キャッシュレスのツールとしては従来のクレジットカードやデビッドカードなどもあるのだが、最近はスマホに搭載することで、電子マネー決済のツールとして使うことができるようになりつつある。たとえば、日本で発売されている最近のiPhoneのApple Payでは、非接触型決済規格のFelicaが使われている。

問題は、これらの技術の中で、店舗などのお金を受け取る側とユーザー側の双方のニーズが合致しないと幅広く普及はできないということだ。非接触型ICカードの技術は確かに日本で一部定着しつつあるのだが、外国人観光客などには対応できない。

QRコード決済は、その点、店舗がQRコードを掲示しておけば、それぞれ異なるスマホの異なるアプリからでもアクセスして支払いができる。馬鹿高い読み取り装置などを店舗に設置する必要がない。

中国などで、屋台でもQRコード決済が普及した背景には、こうした初期投資ほぼゼロに近いメリットがあるからだ。

補助金出してキャッシュレス化推進は「余計なお世話」?

一方、いま経産省が進めようとしているのは、QRコード決済の規格統一だ。経産省はこの6月に大手銀行や楽天、NTTドコモが加わった「キャッシュレス推進協議会」を立ち上げた。

経産省は、これまでの電子マネーがブランドの乱立で、各社が勝手に独自のシステムを構築したことが、その普及の足を引っ張ったとみているようで、QRコードの規格を統一することでその普及に弾みをつけたいと考えているらしい。「JAPAN連合」といった統一のロゴマークを作って普及を図る。規格統一の開発には補助金や優遇税制まで準備しているようだ。

問題は、このキャッシュレス推進協議会にすべての開発業者が参加しているわけではないということだ。そもそも現時点でQRコード決済を最も活用しているのは、おそらく中国人観光客で、それなら中国のアリババ集団が開発した電子決済「アリペイ」に規格統一してしまうのが、もっとも低いコストで日本のキャッシュレス化を推進できることになる。

世界的な技術革新の波に遅れないように、各社が市場参入しなければならない事情もわかる。とはいえ、これまで日本企業は何もかも自前でやりすぎて失敗して来た歴史もある。大手企業とはいえ技術革新に乗り遅れれば、そのツケを払うのは当然だ。

要するに、なぜ経産省が補助金まで出して規格統一に乗り出すのかが疑問だ。推進協議会の役員や参加企業を見てもわかるように、開発が遅れている大手企業に対して規格統一することで共通のスタート地点に立たせようという思惑も見え隠れする。

要するに、規格統一はかなり難しいし、そんなことに税金を投入せずにビジネスの自然淘汰に任せるほうが、かえって邪魔にならないのではないか。これまで政府は、補助金、優遇税制といった名目で不要な政策を展開し、日本経済の効率化を阻害してきたケースが多い。新しい時代の到来にそろそろ目覚めてもいいころだ。

岩崎 博充 経済ジャーナリスト

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いわさき ひろみつ / Hiromitsu Iwasaki

雑誌編集者等を経て1982年に独立し、経済、金融などのジャンルに特化したフリーのライター集団「ライトルーム」を設立。雑誌、新聞、単行本などで執筆活動を行うほか、テレビ、ラジオ等のコメンテーターとしても活動している。『老後破綻 改訂版』(廣済堂出版)、『日本人が知らなかったリスクマネー入門』(翔泳社)、『「老後」プアから身をかわす 50歳でも間に合う女の老後サバイバルマネープラン! 』(主婦の友インフォス情報社)など著書多数。
 

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