日本人に「脱・現金払い」は本当に定着するか

世界に後れを取るインフラ整備と意識

第3の理由は、企業の合理化、コスト削減に役立つことだ。すでに、メガバンクなどの銀行業界では、自前のATMをどんどん廃止して、ATMにかかる経費を削減しようという動きがある。実際、三菱UFJ銀行がATM台数の2割削減を検討している、といった報道も流れている。

中国など現金があまり信用されていない国と違い、日本人はなぜか現金を盲目的に信ずる傾向が強い。言い換えれば、安心できる現金が流通していて、いつでも現金を引き出せる環境があれば、「現金のままでいいじゃないか」と思うかもしれないが、企業の労務管理やコスト管理といった経営上の問題とも絡み、今後日本ではキャッシュレス化に進むと見るほうが正解だろう。

実際、ここに来てQRコードや従来の非接触型決済ツールを使う電子決済システムを導入する動きが加速している。たとえばLINEを使ったスマホ決済を手がける「LINE Pay」では、最近になって中小企業向けの専用アプリを開発。決済に係る手数料を3年間無料にするプランをスタートさせた。

まだ使える店は少ないが 、将来のキャッシュレス化普及を見込んだ先行投資と言っていいだろう。こうしたQRコードを使った決済システムの動きは、ヤフーがソフトバンクと組んで事業展開する「PayPay」も決済手数料ゼロを表明している。

大手企業でも、QRコードを使った決済サービスに進出する動きが目立っている。来春にはサービスを開始する予定のKDDIも、手数料ゼロを視野に入れていると言われる。

QRコード決済が急速にインフラ整備を準備していると言っていいだろう。実際に「LINE Pay」はすでに3000万人の会員数を超えていると言われる。ところが、実際、現時点ではほとんど使われていない。

QRコード決済が使える店舗も、まだまだ普及途中だ。LINE Payが使えるコンビニのローソンも、厳密にはQRコードではなくレジのスキャナーでバーコードを読み取って支払いを行うもの。中国などで急速に定着している、店のQRコードを顧客がアプリで読み取って、金額を入力して決済するシステムではない。

日本はキャッシュレスでも「ガラパゴス」になるかも?

問題は、現金決済が多い日本で本当にキャッシュレス化が実現するのかどうかだ。このところ、確かにメディアでは中国で急速にユーザーを増やしている「QRコード決済」ばかりが取り上げられ、追いつけ、追い越せといったスタンスで報道される。

しかしながら、実際のキャッシュレス化はまだ始まったばかりと言っていい。とりわけ、日本は独自に開発を進めて来た決済ツールが数多く混在していて、中国のように、一斉にひとつのテクノロジーに集約されていくことは想像できない。

たとえば、日本にはすでにさまざまな規格の電子マネーがある。楽天Edy、iD、nanaco、WAON、QUICPay、au WALLET、Suica、PASMOなどだ。

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