義父母を介護した嫁が相続で得る権利の中身 法改正で新設、「特別寄与料」はどんな制度か

著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小
Q)「特別寄与料」とはどういった制度ですか。

A) これまでも相続人に限って「寄与」という考えはあった。介護の貢献度合いに応じ、寄与分という形で相続額を増やすという場合だ。

たとえば、相続人が長男と長女だと仮定する。長女が母の介護に貢献したならば、貢献分を考慮し、長男よりも相続額を多くするという考えだ。

だが、相続人でない長男の妻は、寄与料を請求できなかった。

今回の法改正では、「特別寄与料」を請求できるのは「被相続人の相続人でない親族」と定められている。「親族」とは6親等内の血族、配偶者、3親等内の姻族を指す。

嫁は介護の貢献分の請求可能に

したがって、子の配偶者である「嫁」は「相続人でない親族」となり、介護の貢献分を請求できるようになる。

たとえば夫である長男の父を介護した妻のケースだ。改正前は長男の妻がどれだけ義父の介護に貢献しても、相続人ではないため、遺産を受け取ることはできなかった。しかし「特別の寄与」という仕組みができた法改正後は、介護の貢献分を相続人に請求できる。

これまで嫁の立場では義理の親を介護しても、法律上は何の報いもなかった(写真:kazoka30/iStock)

特別寄与料を200万円と仮定した場合、相続人である夫(長男)と長女に対し、計200万円を請求できる。法定相続分で割った100万円ずつが夫(長男)と長女の相続額から減る。

また、長男である夫がすでに故人となっていた場合も、残された妻はどれだけ義父母への介護で尽くしても、相続人でないため遺産を受け取ることができなかった。しかし法改正をきっかけに、夫(故人)の妹など、相続人から特別寄与料を受け取り、介護への貢献が報われる可能性がある。

Q)「特別寄与料」を請求するための注意点は?

A)まずは介護日記などの記録を残すこと。介護事業者との連絡ノート、電子メールなどでのやり取りを保存しておくのも有効だ。

また介護を受ける被相続人と近い関係にある介護者は、相続開始時に「使い込み疑惑」などぬれぎぬを着せられ、家族から追及される可能性もある。自分のために出してもらった金品があれば、その記録を取るのも大切だ。

おむつ代や交通費など実費については寄与分とは別に請求できる可能性がある。こちらもレシートなどの記録を極力残すことだ。

次ページ介護で貢献すれば、寄与分は必ずもらえる?
関連記事
トピックボードAD
ライフの人気記事