沖縄が台湾人の「日帰り観光」を喜べない現状 買い物に近いから人気? 遠いハワイの背中

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官民一体で観光推進を行う沖縄観光コンベンションビューローの担当者は「課題である平均消費額や平均滞在日数を上げるためにも、ショッピング以外の観光地消費として沖縄でしか体験できないものを広めたい」と、インバウンド向けの「沖縄ブランド」確立を急ぐ。

琉球舞踊を披露する劇場や高級リゾートの展開を通して、台湾や中国などでの沖縄のリブランドを図る計画だ。

また、「遠方からの観光客の方が長期滞在してもらいやすい」(沖縄観光コンベンションビューロー担当者)ため、増え始めた東南アジアや来訪者数が少ない欧米からの定期便就航やチャーター便を誘致し、平均滞在日数の底上げを目指し、平均消費額の伸びを狙う。

現状は人手もインフラも不十分

しかし、沖縄がこれ以上の観光客を受け入れるための体制は万全ではない。インフラや人材が不足しているからだ。

沖縄本島の主な公共交通はバスやタクシーで、全島を網羅する大量輸送交通がない。そこで多くの観光客はレンタカーを使用するが、日本の交通事情に慣れないインバウンドの事故や交通マナーが問題となっている。

さらに交通量が増加するため、沖縄本島を南北に結ぶ幹線道路は朝夕に慢性的な渋滞が発生し、県民も観光客も相互に不満が生じている状態だ。

人材不足も深刻だ。東京や大阪のように外国人留学生が多いわけではないため、中国語や韓国語など観光業者が求める言語を話せる人材が少ない。ショッピングセンターなどでは店舗の割引制度を説明できずに支払いでトラブルになるケースや、返品や保証サービスをめぐる説明が進まずに、結局購入を断念しているケースが取材中にも散見された。

ホテルではベッドメイキングなどの清掃スタッフが足りず、部屋が整えられないので販売できないという事態も一部では起きている。「給与を本土並みに上げて、本土から人が来てもらえるよう試みている」と複数のホテルや旅行事業者は明かす。

これらのインフラや人材不足などの構造的問題が、さらなる消費や滞在を伸ばすことを難しくしている側面がある。沖縄観光コンベンションビューローのような県内の観光組織や旅行業者からは「渋滞、公共交通機関とホテルの不足や言語の問題など、インフラや人材面に起因する問題で旅行者から不満の声が出ている」と話す。

現状では平均消費額や平均滞在日数は大きく伸びそうにない。あと3年で、滞在日数や消費額で県が掲げる目標を達成できるのか。「ハワイ超え」の沖縄の観光産業は正念場にさしかかっている。

劉 彦甫 東洋経済 記者

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りゅう いぇんふ / Yenfu LIU

解説部記者。台湾・中台関係を中心に国際政治やマクロ経済が専門。1994年台湾台北市生まれ、客家系。長崎県立佐世保南高校、早稲田大学政治経済学部経済学科卒業。早稲田大学大学院政治学研究科修士課程修了、修士(ジャーナリズム)。日本の台湾認識・言説を研究している。日本台湾教育支援研究者ネットワーク(SNET台湾)特別研究員。ピアノや旅行、映画・アニメが好き。

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