日本の医薬産業はなぜ米国に勝てないのか メディシノバ・岩城裕一社長兼CEOに聞く

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――新薬開発に関しては、日米の制度面や当局の意識の差だけでなく、その他にもさまざまな違いがありそうです。

やはり、医薬へのスタンスがまったく違います。たとえば、アメリカでは患者がFDAに相談することができるなど、薬のニーズを現場の最前線からとらえられる体制になっています。他の業界もそうですが、アメリカではFDAの職員が製薬企業の出身だったりして、現場感覚がとても優れています。

またさきほども少し申し上げましたが、有望な新薬には公的な支援があります。実は、当社もさきほどのMN―166(ALSでオーファンドラッグ指定を受けている)では、13のプロジェクトで公的資金を獲得しています。「ALS領域で効果があるはずだ」と思っても資金が足りないとき、このように資金の出し手がいることは本当に心強い限りです。

一方、こうした環境が日本でも実現されたらと願いますが、そう簡単ではありません。よく言われるように、たとえ海外で臨床試験が進んだ医薬開発品でも、日本の当局に相談すると「最初の段階から(治験を)やってください」と言われてがっかりすることが大半です。一方で、「海外ですでに発売された薬なら、日本国内でもそのまま承認できる」といいます。

これでは、いつまでたっても日本で画期的な創薬ができる環境が整いません。最近は規制緩和が行われつつありますが、トップは積極的でも現場レベルでは必ずしもそうではありません。このままでは日本の製薬業界の将来が大変心配です。当局、企業だけではありません。大学も似たようなものです。

もし日本の大学の薬学部に入学しても、前臨床と臨床試験といった創薬の過程はほとんど勉強しません。製薬企業に入ってもCRO(臨床試験支援企業)に丸投げのケースもある。「この国の医薬産業の未来は本当に大丈夫か」と言いたくもなります。

日本は短期値上がり目的が主体、投資家層が薄い

――マーケットの環境もかなり違います。

2005年に続き、2006年にはナスダック上場も果たしましたが、これは日本では公募増資での資金調達が事実上困難だと思ったからです。

日本では企業が公募増資をすると、どうしても希薄化に嫌気されて、株価が下落するケースが大半です。これは他の上場バイオベンチャー企業も当時から苦労していることです。

一方、アメリカではこれまでに4回、公募による資金調達を実施できました。そもそもアメリカではバイオベンチャーに対する投資姿勢が確立されているだけでなく、キャップ(時価総額)に応じた資金の出し手もしっかり存在しています。

日本ではバイオベンチャーの投資を行うのは短期値上がり目的の個人投資家ばかりで、残念ながら、投資家層が薄いと感じています。「日本でIPO(新規上場)したい」という外国企業もあるとは思いますが、今のままなら、彼らは(市場が成熟している)上海市場や香港市場を選択するのではないでしょうか。

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