2020年五輪成功には若者の活躍が不可欠 水野正人 × 三ツ谷洋子 対談(上)
三ツ谷:開催経験をもつ東京に、再び五輪を招致するのは至難の業であったと思います。そこには何かこだわり、秘するものがあったのでしょうか。
水野:日本人としての愛国心をもっていたからできたのでしょう。オリンピック・パラリンピック招致はJOCの総意でした。JOCの仕事(副会長)を務めていたご縁で、招致委員会の事務局の運営を担当しました。会社は辞めることができても、国家の威信にかかわる仕事を途中で投げ出すわけにいかないと思って頑張りました。(笑)
2020年招致活動はオールジャパン体制で絶対に成功させたいと思い、会社を辞め、背水の陣を敷いて臨みました。というのも、JOC関係者は2016年と2020年の招致を一連の活動として考えていたからです。2016年招致で経験を積み、そこでのプランを改善して2020年招致を成功させる、という段取りです。実際、今回の招致活動でお会いした皆さんには、“We have kept the best and improved the rest!(よいものは残し、それ以外のものはすべて改善する)” と約束しました。
三ツ谷:招致活動の体制を見ても、2020年の招致活動評議会の最高顧問を安倍総理にお願いするなど、前回の招致活動と比べると意気込みがずいぶん違っていたように思います。
水野:スポーツ界だけでなく政界・財界を巻き込んだオールジャパン体制を構築していただきました。財界では経団連や経済同友会の会長、日本商工会、とくに東商の皆さんには積極的に活動を進めていただきました。
さらに、今回の招致の取り組みで功を奏したのは、550万個ものピンバッジをつくり、多くの人が一緒になって草の根の招致活動を盛り上げてくれたことです。
ロビー活動は友情、信頼、理解が大切
三ツ谷:水野さんが苦労されたロビー活動は水面下で行なわれていたので、一般の人にあまり知られていませんね。
水野:ロビー活動は友情、信頼、理解が大切です。各委員は貴重な一票をどのように活用すべきかを慎重に考えています。相手との信頼関係を築けば、「2回目の五輪招致は、どのような点に気を付けたらよいのか」「東京の交通手段に改善点はあるのか」「より多くのお客さんにチケットを売るには」という話ができるようになります。IOC委員への個別訪問は禁じられているので、あくまでもルールの範囲内での招致活動です。
三ツ谷:東京への支持をお願いするのではなく、開催都市として何をどうしたらよいかを、まず聞くことが重要なのですね。
水野:そうです。自分のことばかり一方的に話をしたあとに「あなたとお付き合いしたい」と告白したところで、恋が成就しないのと同じです。(笑)
三ツ谷:たしかに、自分の考えをしっかり聞いてもらえるパートナーのほうが、仲良くなれそうです。