2020年五輪成功には若者の活躍が不可欠 水野正人 × 三ツ谷洋子 対談(上)
ロンドン五輪から変わった
三ツ谷:五輪招致の機運が高まったのは、ロンドン五輪に出場した選手たちの活躍の影響も大きいのでしょうか。
水野:おっしゃるように、過去最多のメダル38個を獲得したロンドン五輪は、日本人に大きなインパクトを与え、現在でも強く印象付けられています。オリンピック選手による銀座パレードに、平日にもかかわらず50万もの人がお越しくださった。これが東京五輪に対する関心を高める土台を築いてくれたと思います。
去年5月の五輪招致の支持率はIOC(国際オリンピック委員会)の独自調査で47%。賛成が半数にも満たない数字に招致委員会のスタッフもさすがに焦りを覚え、あらゆる場面に出かけて招致活動をアピールしていきました。その甲斐もあって、今年8月の文科省調査では支持率が9割にまで上がりました。
三ツ谷:これだけ価値観が多様化した時代に、驚くべき数字ですね。
水野:国民の大きな期待を感じていたからこそ、招致委員会のメンバーは皆、最後まで頑張れたと思います。
三ツ谷:水野さんは会社の職をすべて辞して、2020年の招致活動に臨まれました。そこにはミズノに対するご配慮もあったと思います。
水野:会社が厳しい経営状況であったら、招致活動に取り組む余裕はなかったと思います。しかし幸いにも、私以外の社員がしっかり働いてくれてミズノの経営は安定していました。社員のなかには、「会長が会社を辞めたほうが経営はうまくいきますよ」と冗談をいう者もいたくらいです。(笑)
私が会長時代、社員へ頻繁に話していたのは、「リーダーの役割とは後任を育てることだ」という点です。リーダーがいなくても組織が回るのが理想で、日頃からその準備をしておくべきなのです。たとえば、部長が突然病気になって1カ月ほど休んでも、その部は機能していかなければなりません。
三ツ谷:IOCは利益相反に関する行為に対して非常に厳しくチェックしていますね。
水野:たしかに、IOCのオフィシャルサプライヤーになっているスポーツ用品会社の経営者が自国での五輪開催を推進していたのでは、利益相反になってしまいます。
2016年の招致活動ではミズノに在職中でしたので招致委員会には入らず、JOC(日本オリンピック委員会)副会長として横からのサポートに専念しました。