モータージャーナリストや自動車評論家の足元にも及ばないが、記者はかつて某自動車関係会社に勤め、小型車から高級車、スポーツカー、トラックなど、さまざまな車種を乗り比べた経験がある。そんな観点からリポートしてみたい。
BMWの技術を集めた現行M3は、事前の想像をはるかに超える高性能車だった。
一般道ではアクセルを強めに踏むことはまずなかった。安全運転が必須であり、交通法規も守らなければならないという大前提はもちろんながら、あっという間に結構なスピードが出てしまうからだ。高速道路の進入時に思い切ってアクセルを全開にしてみたところ、やはり恐いぐらいに猛烈な加速を見せた。追い越しも楽々。車両重量1640kgの車体を軽々と、それも運転者が行う操作に対して、運転者の意図したとおりに走る。極めてコントロールしやすいという印象を持った。
相当なスピードで走っても安心感がある
高速道路では200キロメートル以上の距離を走らせた。これだけ高性能で高価格な車をそれだけ長く乗るのは初めての体験だった。個人的な印象になってしまうが、驚いたのはスピードを上げても、それほどスピードが出ていないような走行感覚を得られたことだ。
単純にエンジンのパワーが大きいから、ということではなく、ボディの剛性、足回り、太いタイヤなど各所のセッティングに工夫がなされているのだろう。
普段は新車時で車両本体価格250万円ぐらいの国産車をマイカーとして乗っている。ごくごく一般的な車で、最高出力は140馬力だ。それと比べること自体おこがましいが、高速域の体感速度は時速30~40キロメートル分ぐらい違うように感じた。M3だと時速100キロメートルで走っているのに、マイカーなら時速60キロメートルぐらいのような感じだ。スピードの出し過ぎにはもちろん注意したが、M3では高速道路で極めて安心しながら走れた。
加えて、ブレーキが強烈に効く。ブレーキペダルの踏み始めに「あまりに効き過ぎる」と感じるほど減速する。人によってはこれもいざというときに事故を防ぐ機能として安全につながる。コーナーでの旋回スピードも高く、カーブのきつい道でも結構なスピードで難なく曲がっていく。7速オートマチックは、オートマ任せでゆったりと走ることもできるし、手元でギアも選べるので、レースカーのようなスポーティな走りにも対応する。