BMW「M3」の車名を見聞きして心躍る人は、なかなかの自動車好きだと推察する。
ドイツの高級車メーカーであるBMWが販売する中でも、売れ筋である「3シリーズ」のセダンをベースにエンジン、足回りなどを徹底的に強化し、専用の内外装で固めたスポーツモデルだ。日本車で言えば、かつての「スカイラインGT-R」(日産自動車)、「ランサーエボリューション」(三菱自動車)、「インプレッサWRX」(SUBARU)などのような、象徴的な存在である。
BMWグループで、レースやモータースポーツを研究開発するBMW M社が開発を担当。初代登場は1985年と30年以上の歴史と伝統があり、日本では2014年2月からBMWジャパンが販売している現行M3は5世代目に当たる。
次期3シリーズが6年ぶりのフルモデルチェンジを間近に控えると言われる中、次期型M3の開発も進んでいるとみられる。登場から4年以上が経過しているタイミングではあるが、記者はそんなM3の現行モデルにじっくりと試乗する機会を得た。
450馬力、56.1kgmのハイパワーマシン
M3「コンペティションパッケージ」。排気量3000cc、直列6気筒ターボエンジンの最高出力は450馬力(331kw)、最大トルクで56.1kgm(550Nm)というスペックを誇るマシンだ。一般的な国産の自家用車に乗っている人ならマイカーの最高出力や最大トルクと比べて、M3のパワーがいかにケタ違いかがわかるだろう。
ほんの15年ぐらい前まで日本車メーカーには最高出力を280馬力に抑えるという自主規制があった。今でこそベース車の最高出力が570馬力まで高まった日産「GT-R」も、2007年の発売当初は480馬力だった。
あくまで数値上だが、今回乗ったM3の馬力は、発売当初、世界の自動車メーカーを驚かせた初期型の現行GT-Rに近いということになる。
今回、試乗したモデルの車両本体価格は1256万円。特注カラーやパーキング・サポート・パッケージ、カーボン・セラミックブレーキなど約180万円分のオプションが付いていた。消費税だけで約100万円。オプションを抜きにしても1500万円ぐらいの資金がないと買えない。一介のサラリーマンではとても手が出せないだろう。