安倍首相、3選後の難関は対米自動車問題だ

政策の重点は金融から財政へ

一方、安倍首相は10日の総裁選演説会で「気候変動に伴う防災のため国土強靭化の対策を3年間で実施する」と述べた。

自民党の二階俊博、公明党の井上義久両幹事長は18日、北海道で最大震度7を観測した地震や台風21号の被害などに対応するため、補正予算の編成を求めることで一致した。

総裁選で安倍首相の金融緩和路線に異議を呈した石破茂元幹事長も、数年前から「日本海側は新幹線も高速道路もつながっていない。災害時の代替路線確保の観点からミッシングリンク(未整備区間)の解消は必要」と繰り返しており、財政出動には前向きだ。

さらに自民党内では、デフレ脱却のためにも大幅な財政出動を求める声があり、安藤裕衆院議員らは7月に「早期デフレ脱却のため2019年度予算で10兆円の特別枠が必要」「企業貯蓄が減少に転じるまで、政府は負債の拡大をちゅうちょすべきでない」などの提言をまとめた。同氏を含むリフレ派の同党議員は、消費増税凍結を含む財政フル出動を主張している。

また、自民党内の財政を巡る再建派と拡張派のバランスも、拡張派が力を増大させる方向にシフトしている。別の政府関係者は、日銀の国債買い入れ額が減少傾向をたどっているとは言え、足元で新規国債発行額に相当する規模に達しており、市場が政府の財政拡張に反応しなくなっている点を指摘。「財政再建に積極的だった与党議員にも、変化が出て来た」と話す。 

対米自動車交渉、身構える政府・与党

安倍首相が直面するもう1つの大きな政策課題は、対米通商問題だ。今月下旬とみられる日米首脳会談で、日米通商交渉(FFR)の大枠合意を目指すが、米国は2国間協定(FTA)の締結と自動車を中心にした貿易不均衡の早期是正を求めており、交渉の行方は予断を許さない。

政府・与党内では、米・メキシコ間で合意した修正された北米自由貿易協定(NAFTA)の中に、自動車の数量規制とみられる項目が入ったことへの警戒が浮上している。そこでは、メキシコからの完成車輸出が一定量を超えた場合、25%の関税を課すと明記された。政府関係者の1人は「米国が日本に対しても、同様の対応を求めてくる可能性がある」と指摘する。

経済産業省は2019年度の税制改正要望で、自動車関係税の大幅引き下げを要求している。表向き「2019年10月の消費税引き上げへの対応」(自民党幹部)だが、日米交渉を見据えた「自動車業界対策」(与党関係者)とも言われる。

首脳会談を含めた日米交渉で、日本の自動車産業に大きな影響が出るような結果になれば、株価や為替の変動だけでなく、雇用問題にも波及しかねない大きなインパクトを持つと与党関係者の一部は、大きな懸念を示す。

月末にも予定される日米首脳会談は、3選後の安倍首相にとっていきなり正念場となりそうだ。

(竹本能文 編集:田巻一彦)

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