「四季報の達人」が教える10倍株探しの4条件 「分厚く、細かい」四季報はどこを読むべきか

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時価総額が10倍以上になっているものは48あるが、増資で時価総額が増加したケースを除外してもほとんどが10年前と比べて10倍株に化けた銘柄である。つまり、この表自体、10倍株のリストだといっても、いいすぎにはならないだろう。

そのため、リストアップされている銘柄の現在と10年前の状況を分析すれば、10倍株を探すヒントになるのではないかと考えた。分析の結果、浮かび上がってきたことは、10年前の段階で上場から「5年未満」が61%、経営形態は「オーナー系・同族」が80%と大半を占めていたことだ。

いずれも1998年と2016年が似ていると気づいた時点でわかっていたが、特に「上場5年以内」の若い企業が10倍株の候補になる、ということはこの特集記事で確信に近づいた。

10倍株はちょっとした「気づき」から見つかる

ウェブ版の「会社四季報オンライン」でスクリーニング機能を使えば、上の条件に合った銘柄を見つけることができる(「ポイント③ オーナー経営者で筆頭株主」についてはスクリーニングで絞ることはできないので要注意。四季報のページをめくって1つひとつ確認すること)。

スクリーニングについては、四季報オンラインにある記事「完全マスター!『新』スクリーニングのすべて」を参照してほしい。

スクリーニング機能はとても便利で私も活用している。ただ、四季報オンラインだけでは、気になる銘柄だけをピンポイントに見てしまいがちで、どうしても偏りが生じてしまう。

それは、たとえばスーパーに出掛け、陳列されている商品をズラッと見れば、季節が感じられたり、売れ筋がわかったりするのと同じだと思う。全体を俯瞰する意味では、アナログだが、紙の四季報の読破が最強だ。両者のよさを活かす意味でも、四季報と四季報オンラインの併用をおすすめする。

「テンバガー(10倍上がる株)を見つけるには、まずは自分の家の近くから始めることだ。裏庭になければ、商店街や、職場である」

これは、株式投資家のためのバイブルで、不朽の名著とされる『ピーター・リンチの株で勝つ』(ダイヤモンド社)にある一節だ。筆者のピーター・リンチ氏は1977年から13年間で、投資信託会社フィデリティの有名ファンド「マゼラン・ファンド」の運用に携わり、基準価格を約28倍にした伝説のファンドマネジャーだ。同時に「テンバガー」という言葉を、広く一般の人々に知らしめたことでも有名だ。テンバガーとはウォール街の業界用語で、株価が10倍になる銘柄を指す。

同書の中で、妻が愛用するストッキングのメーカーや、女性の間で話題になっている洋服店の銘柄は10倍株や100倍株にもなっている、というエピソードなどを紹介している。アナリストなどプロの専門家の分析より、身近に起きている現象や家族のひと言に投資のヒントがあると一貫して訴えていた。

このリンチ氏の考え方に、私はとても共感を覚える。10倍株はちょっとした「気づき」から見つかるのだ。

生活の中での「気づき」を検証する、あるいは、「気づき」そのものを与えてくれるもの、それが『会社四季報』である。

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