「四季報の達人」が教える10倍株探しの4条件 「分厚く、細かい」四季報はどこを読むべきか

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中には、なぜいちばんに注目すべきが、利益ではなく売上高なのか、疑問をもたれる方もいるだろう。その答えはいたってシンプルで「売上高なくして利益は存在しない」からだ。利益は、「売上高」からコストを差し引いたものである。つまり、「売上高」はすべての利益の「源泉」で最も重要な指標。だからこそ、成長性を見るときには、売上高の伸びを第一にチェックすべきだと考えている。

ポイント②:営業利益率が10%以上

10倍株を見つけるときに最重視してほしいのは、成長性を示す「増収率」の高さだが、稼ぐ力を示す「営業利益率」にも着目してほしい。残念ながら四季報にはその数字が記載されていないので、「営業利益率(%)=営業利益÷売上高×100」で計算する。

増収率と同様、営業利益率もまずは平均値を把握しておくことが重要だ。営業利益率で分子になる営業利益は、売上高から売上原価(原材料費など)と人件費などの販売管理費を差し引いたもので、本業の儲けを表す。つまり営業利益率は「本業で稼ぐ力」と考えてよい。

その平均値は、四季報2018年4集秋号なら4〜5ページにある「[業種別]業績展望」の表を参考に算出できる。ここには売上高や営業利益など、業種別に集計された合計の実額が記載されている。これらの数字を使うと、今期(2018年7月期〜2019年6月期)の金融を除く全産業の平均的な営業利益率は「約7%」と計算される。一般的には10%以上あれば「稼ぐ力」のある優良企業と判断してよい。

経営者と株主も要チェック

ポイント③:オーナー経営者で筆頭株主

10倍株探しのポイントとして、私がチェックしている3つ目のポイントは経営体制で、オーナー社長のオーナー企業であるということだ。

その見分け方は四季報の【役員】欄にある社長もしくは会長の名前が、【株主】欄の上位株主にあることである。オーナーの個人名が記載されているのがベストだが、100歩譲って、オーナーの持ち株会社名でもよいだろう。

私の経験則だが株価が右肩上がりの企業には、創業者もしくは創業家出身の経営者(創業者の資産管理会社を含む)が株主1位の筆頭株主、という共通点がある。

上場したての企業では創業者の保有比率が50%以上を占めるケースもあるが、事業が軌道に乗っているときはトップダウンで迅速に意思決定が行われ、すばやく行動できることから他社に先んじて市場を制することができる。一方で、ワンマン経営に陥るリスクもあるので注意する必要がある。

例えばソフトバンクグループの孫正義社長は21.0%、ファーストリテイリングの柳井正会長兼社長は21.6%の株を保有し、ともに筆頭株主となっているが過半数を超えていない。これは筆頭株主として経営にコミットする意思を表明するとともに、残り約80%の株主を受け入れてもトップマネジメントとして株主から信任されるという自信の表れでもあり、このような形になれるのが理想かもしれない。

一方、オーナーと筆頭株主が別の人物のときもある。どのような人が筆頭株主なのか、把握できているならよいが、わからない場合はよいケースと悪いケースがあるので、できれば投資対象からは外したほうがよい。一番避けるべきは、その株を売ることを前提としている投資ファンドが筆頭株主になっている場合だ。また、オーナー一族の名前が上位にズラリと並んでいる場合は、相続対策で上場している可能性もあるので注意したい。

ポイント④:上場5年以内

四季報の2018年1集新春号には巻頭特集として、「10年前比較ランキング」が掲載されていた。これは非常に有益な情報で、四季報に毎号掲載されることを編集部にお願いしたいぐらいの内容だった。

中でも私が注目したのが「株式時価総額」のランキングで、これは2007年10月31日から2017年11月27日までの10年間で時価総額が大きく膨らんだものを、1位のRIZAPグループの238.8倍を筆頭にランキングしたものである。

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