「四季報の達人」が教える10倍株探しの4条件 「分厚く、細かい」四季報はどこを読むべきか

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そして最も重要な共通点は、相場全般が冴えない中、中小型株(時価総額が5000億円程度まで)が上昇するという「二極化相場」が見られたことだ。

1998年の日経平均は年初1万5000円弱からスタート。高値は1万7000円程度までいったが、10月には1万3000円割れとなりバブル崩壊後の最安値を更新した。しかし、ソフトバンク(現ソフトバンクグループ)、ファーストリテイリング、ヤフー、ニトリ(現ニトリホールディングス)など、当時の中小型株は軒並み上昇し二極化相場になった。これらの企業は今となっては業界の顔だが、当時は伸び盛りで”若い”中小型の成長株で、株価も10倍株を大きく上回った。

その後、日経平均は安値をつけ反転し、2000年4月の高値2万1000円弱まで上昇する。この相場がいわゆる「ITバブル」だった。中小型株は2000年高値まで当たり前のように株価10倍となり、100倍株もいくつか生まれている。

一方の2016年も、日経平均は前年末の1万9000円強から急落して始まり、しばらく1万6000円から1万7000円のボックス相場が続いた。そのような中、中小型株が多い東証マザーズ指数は一時4割高まで急騰したのだ。

このように、どちらの年も日経平均は冴えないが、中小型株は上昇する「二極化相場」が見られた。

10倍株を見つける4つのポイント

1998年の安値から2016年までの高値で株価パフォーマンスを見ると、ファーストリテイリングは236倍、ヤフーは144倍、ニトリホールディングスは93倍になっていた。ソフトバンクグループも一足早い1年前の1997年安値から見れば高値まで118倍になっている。

これらの銘柄の共通点を探ってみて、浮かび上がったのが「4つのポイント」だった。次から、そのポイントを1つひとつ解説していきたい。

ポイント①:「増収率」が高い=4年で売上高2倍

10倍株探しで、私が一番重視しているのは「急成長」だ。そもそも成長とは何かだが、成長とは売上高の伸び、つまり「増収率」であり、その数字が20%以上のものが急成長していると考えている。

増収率は、四季報の【業績】欄に書かれている売上高を見るのだが、残念ながら四季報には増収率が記載されていないため各自で計算しなければならない。

増収率は、今期の売り上げ予想(太字で示された上の段)が、前期の売上高に対してどれだけ増えているか、つまり前年比何%増になっているのかであり、計算式は「増収率(%)=(今期売り上げ予想÷前期売上高×100)-100」で求めることができる。

ただし急成長の目安である増収率20%以上を簡単に見極めるコツがあり、それは売上高が「4年で2倍」になっているかどうかである。

例えば、もともと売上高が100億円として、1年間に20%ずつ伸びるとすると、1年後の売上高は120億円、2年後144億円、3年後には約173億円、4年後には約208億となり、「4年で2倍」を超える。

また増収率をもってあれこれ考えるには、まずこれらの平均値を把握しておくことも重要だ。増収率の平均は、通常、四季報3ページに掲載されている「市場別決算業績集計表」をチェックする。いわゆる急成長株は、その表の新興市場の平均増収率(2018年秋号の今期予想は13.8%)を継続して超える増収率の企業だと考えてよいだろう。

先に「1年間に20%ずつ伸びると、4年後に2倍を超える」と述べたが、「1年間に20%ずつ伸びる」ということは市場の平均を超えている数字だということがわかる。例外的な年もあるが、せいぜい2%の低成長が続く日本で、20%の成長はかなり力強いと考えてよいだろう。

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