くみ:エマニュエルの指摘するとおり、確かに日本では、あらゆる年代のあらゆる人がそれなりに政治を語る、という現象は見られないかも。私が知るかぎりでは、小規模でも会社を経営していたり、企業のトップに近い立場の人ほど日常的に政治に対する意見を口にすることが多いかな。
でも、逆に、学生とか(政治専攻は除くかもしれないけれど)、政治が自分たちとは無関係だと思っていて興味がなかったり、いわゆるサラリーマンとかは、居酒屋での話題は政治よりも、もっと身近な先輩、上司の悪口とか仕事の愚痴などが多そうなイメージ。
普通のフランス人が突然マクロン派になった
エマニュエル : フランスでは政治家について、たとえば人となりだとか、私生活だとか賄賂や権力の乱用みたいなワイドショー的な話ももちろんするんだけど、それだけでなく、どんな政策が今必要だとか、現在の政策の問題点みたいな政治そのものについて議論することも好きなんだ。
つねに政治に関心があって議論をしょっちゅうする、このフランス人の特徴は国にとっても大きな影響を与えている。
くみ:たとえばどんな?
エマニュエル : フランス革命がその典型だね。18世紀のフランス人は、現在よりもはるかに政治に関心があったんだろう。この関心の高さと議論を好む性質があったからこそ起きた革命といえる。
最近の例としては、エマニュエル・マクロンが大統領選挙のときに行った運動があげられるかな。数カ月の間に何千、何万という普通のフランス人が突然マクロンに賛同して、支持者として活動を始めたんだ。各地で集会が開かれていたし、多くの人がマクロンの政策を広めるために広報的な活動を、余暇を使ってしていた。これが本当に熱狂的で、ここ数十年の間では類を見ないぐらいに、大きな運動だった。こういうことは日本でもみられるのかな?
くみ:少し違うかもしれないけれど、日本でも、特にこれまで政治や政治家のことをあまり知らず関心もなかった人たちが急に方向転換し始めることは増えているように思う。