それを感じさせるのが、自分が優勝した表彰式で謝ったり、「ありがとう」と言いながら、ペコっと頭を下げる仕草などだ。堂々と自己主張するタイプではなく、シャイで控えめ。日本人に近い気質も持っているようにも見える。
今年3月の大会でツアー初優勝した時のスピーチも大テレで、「ハロー、あー、私はなおみ、、、あ、いいや、気にしないで」「えっと、なんだっけ」という感じで、くすくすと笑いながら、なんともマイペース。「これって史上最悪のスピーチね」と言って観衆を大いに沸かせた。
のんびりとほのぼのとした“なおみ節”に「観衆はさらに彼女に恋をした」(イギリス・テレグラフ)と評された。テレグラフは「大坂なおみの不思議ですばらしい世界」というこの記事の中で、彼女がひょうひょうと自然体で勝ち抜くさまは、「まるで裏庭でバットとボールで遊んでいるかのよう」と形容した。
「なおみワールド」の魅力
2年前には、抱負を聞かれ、ポケモンのテーマソングの一節を上げ、報道陣がぽかんとした、といったエピソードにも触れ、「飾らず、物おじしなくて、ユニーク。大坂は子どものような不思議さで話し、彼女の声の抑揚やリズムはまるで、『アメリカン・パイ』(米青春映画)のキャラクターのように聞こえる」(同)と独特の「なおみワールド」の魅力にはまる人が続出していることが紹介されている。
今回の試合後のインタビューでも、「なんで名前と出身地が同じなのか」と聞かれ、「オオサカで生まれた人の名字はみんなオオサカなのよ」と笑いを取り、「試合が終わったら何したい」という質問に対しては「私、そんなに社交的じゃないの」「寝たい。ビデオゲームもしたいかな」、そして、「何を食べたいか」との質問には、「とんかつ、かつ丼、カツカレー、そして抹茶アイスクリーム」となんとも愛らしい回答だった。
そのインタビューで、「なぜ、表彰式で謝らなければと思ったのか」と問われると、「その質問は私を感傷的にさせるわ。だって、彼女(ウィリアムズ)は24回目のグランドスラムを取りたかったでしょ。誰もが知っていたわ。(でも)私がコートに立った時、私は自分が違う人間のように感じた。(その時の私は)セリーナのファンではなく、対戦相手と対峙する一人のテニスプレイヤーになっていた。でも、ネットのところで、彼女とハグをした時、私はまた、(セリーナのファンだった)子どもに戻ったような気がしたの」と涙ぐみながら語った。
つまり、マイペースに見えるキャラの内面には、誰よりも人の気持ちを思いやる優しさと、いったんコートに立てば、不屈のファイターへとあっという間に憑依する強靭なメンタルを持ち合わせているということだろう。ここ2年で急速な成長を遂げたといわれる大坂の強さを引き出してきたのが、コーチのセルビア系ドイツ人、33歳のサーシャ・バイン氏だ。以前、ウィリアムズの練習相手を8年間も務めていたが、昨年の12月に、大坂選手とタッグを組んだ。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら