「iPhone Xs Max」なんて名前はガッカリだ 慎重にブランディングしてきたはずなのに…

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また、iPhone 6以降、大画面モデルが追加されるようになり、こちらは「iPhone 6 Plus」のように、「Plus」という名称が付けられ、2017年も「iPhone 8 Plus」というモデル名で5.5インチ大画面モデルが登場した。

これまでの経緯から考えれば、「iPhone Xs」と「iPhone Xs Plus」という展開が自然だが、「Max」という接尾語がつくのであれば、iPhoneだけでなくアップルとしても製品名に用いる初めての接尾語となる。

一方で、MacBookシリーズ、iMacシリーズ、iPadシリーズはよりシンプルなモデル名を用意している。iPadの場合、最も価格が安い「iPad(第6世代)」、上位モデルは「iPad Pro 10.5インチ」、「iPad Pro 12.9インチ(第2世代)」が現在のラインナップだ。

無印と「Pro」、サイズ違いはインチ表示、というのが他の製品におけるルールとなっていることを考えると、「iPhone Xs 5.8インチ」「iPhone Xs 6.5インチ」「iPhone 6.1インチ」という展開の方がシンプルだ。

実際、iPhone Xs同士で性能や機能の違いは画面サイズとSIMスロット程度に限られるとみられている。そのため「Max」という単語が想起させるほど性能に大きな違いもなさそうなのだが…。

新型iPhoneが「最大化」するものとは?

新型iPhoneの実際の姿や名前は、日本時間9月13日午前2時からの発表会を楽しみにしておきたいところだが、iPhone Xs Maxの登場で「最大化」するのは何だろうか。

一つは、買い換えサイクルの短縮化だ。

もともとアップルは、2年ごとに割引き購入できる仕組みを各国キャリアとの間で作り上げ、iPhoneを2年サイクルで買い換える仕組みを作ってきた。しかし現在、スマートフォンそのものの性能向上から、スマートフォンの買い換えサイクルは一般的に2年を超え、3年程度に伸びてきている。

今回、液晶ディスプレイの廉価版iPhoneも、全画面化、顔認証に対応するTrueDepthディスプレイ搭載、そして6.1インチの大画面の搭載となることから、これまでのホームボタン付きのiPhoneに対して大きなデザイン変更となる。

現在46%とも言われる、2015年モデルのiPhone 6sかそれより古いiPhoneを利用するユーザーの買い替え需要の喚起、またAndroidからの乗り換えの促進につながると考えられる。飽和状態のスマートフォン市場で販売台数を伸ばすほぼ唯一の可能性を狙うことができるというわけだ。

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平均販売価格については、2018年のような大きな上昇は見込めないだろう。

2017年モデルはiPhone 8が699ドル、iPhone 8 Plusが799ドル、iPhone Xが999ドルからという展開で、iPhone Xが長らくベストセラーとなったことから、iPhoneの平均販売価格は大きく上昇した。

しかし、2018年では廉価版モデルが669〜699ドルからとなり、iPhone X後継モデルに899ドル、大画面モデルが999ドルという展開となる可能性が高い。今回、大画面モデルの販売比率がさらに大幅に上昇するとは考えにくいため、「販売台数が伸びなくても売り上げを伸ばす」という見通しは立てにくい。

となるとiPhoneの売り上げを伸ばすために必要なのは販売台数の伸びだ。つまり、2017年モデルでは「販売単価の最大化」を実現したが、2018年モデルでは「販売台数の最大化」を目指すのかもしれない。

松村 太郎 ジャーナリスト

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まつむら たろう / Taro Matsumura

1980年生まれ。慶應義塾大学政策・メディア研究科卒。慶應義塾大学SFC研究所上席所員(訪問)、キャスタリア株式会社取締役研究責任者、ビジネス・ブレークスルー大学講師。著書に『LinkedInスタートブック』(日経BP)、『スマートフォン新時代』(NTT出版)、監訳に『「ソーシャルラーニング」入門』(日経BP)など。

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