キヤノンが挑む「高級ミラーレス」陣取り合戦 ソニー、ニコンと三つどもえのシェア争い

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EOS Rはキヤノンにとって初の高級ミラーレスカメラだ。「フルサイズ」と呼ばれる、一眼レフと同じサイズのイメージセンサー(光を電気信号に変換する半導体)を搭載している。ここ数年、プロのカメラマンやハイアマチュアの間で存在感を強めてきた。

EOS Rをお披露目したキヤノンの真栄田雅也社長は出来栄えに自信を込めた(撮影:尾形文繁)

これまで同社が展開してきたミラーレスカメラは低価格帯の入門機のみだった。主力の一眼レフとのカニバリゼーションを恐れてきたからである。「一眼レフとの食い合いは起こりうるだろう」と真栄田氏も認める。EOS Rの発売には、一定程度の覚悟で望んでいるのだ。

ミラーレス市場は無視できないほどの成長を見せている。2017年のカメラ世界出荷台数は一眼レフが前年比13%減の740万台と減少傾向にあるのに対し、ミラーレスは同18.6%増の414万台と好調(テクノ・システム・リサーチ調べ)。ミラーレスは本体内部にレンズがとらえた光をファインダーに反射させる「ミラー」がない。一眼レフよりも小型で軽量なため、消費者の支持を集めている。

ニコンも発表、三つどもえの戦いに

同じく一眼レフを主力とするニコンは、一足早く8月末に初となるフルサイズミラーレスの新製品を発表。両社が明らかに意識するのが、2013年にフルサイズミラーレスを発売したソニーである。2017年のミラーレスの世界シェアはソニーが42%で独走。そこに一眼レフの2強であるキヤノンとニコンが挑むという構図ができあがった。

ニコンが一足早く発表したフルサイズミラーレス「Z」シリーズ(左)と真っ向からぶつかるキヤノンの「EOS R」(右)(撮影:尾形文繁)

折しもキヤノンは2018年12月期の通期業績予想を、7月の中間決算発表時に下方修正。中でもイメージングシステム事業は、カメラの販売台数減少と単価下落が主要因となり、営業利益予想を6%減の1645億円に修正した。真栄田社長は、「(平均単価の上昇を狙うという)“不純な動機”を持っていない人がいないとはいえない」と、EOS Rの投入によって単価下落を抑えたいという思いを隠さない。

キヤノンは今回、EOS R向けに4機種のRFレンズを発表した。今後ミラーレスに注力していくうえで、レンズの製品群を大幅に拡充するとみられる。ただ、その全貌はまだ明らかではない。

「ミラーレスカメラでもシェアナンバー1を奪うのは当たり前だ」(キヤノン幹部)。これまで一眼レフで培ってきた光学技術を強みとして、キヤノンはミラーレスでもトップを狙う。キヤノン、ニコン、ソニーの3社が争う頂上決戦は、カメラ市場を大きく変えることになりそうだ。

劉 彦甫 東洋経済 記者

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りゅう いぇんふ / Yenfu LIU

解説部記者。台湾・中台関係を中心に国際政治やマクロ経済が専門。1994年台湾台北市生まれ、客家系。長崎県立佐世保南高校、早稲田大学政治経済学部経済学科卒業。早稲田大学大学院政治学研究科修士課程修了、修士(ジャーナリズム)。日本の台湾認識・言説を研究している。日本台湾教育支援研究者ネットワーク(SNET台湾)特別研究員。ピアノや旅行、映画・アニメが好き。

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