キヤノンが挑む「高級ミラーレス」陣取り合戦 ソニー、ニコンと三つどもえのシェア争い
1987年にオートフォーカス一眼レフカメラの「EOS(イオス)」シリーズを発売してから約30年。カメラ大手のキヤノンが、新たなステージへと踏み出した。
「これから先の30年とその先を見据えた」。9月5日、キヤノンの真栄田雅也社長が自信たっぷりに語り始めた新製品発表会。ずらりと並んだ経営陣とともに披露したのが、ミラーレス一眼カメラの新製品「EOS R」だ。本体の参考価格は23万7500円(税別)。発表会で見えてきたのは、次の30年に向けてミラーレスへと軸足を移していくという姿勢だった。
EOS Rは、まさに“肝いり”だ。1つは新たに開発したマウントだ。マウントとはカメラ本体とレンズの接合部の規格。通常はメーカーごとに規格が異なり、アダプターをつけない限り他社のレンズは使えない。それゆえ、交換レンズはカメラメーカーの収益性を支えてきた。
30年ぶり新マウントをミラーレスに
今回採用したのが、同社がこの30年間展開してきた独自の「EFマウント」とはまったく異なる「RFマウント」。54ミリメートルという大口径で、より多くの光を取り込めるように設計。さらに、本体とレンズとの間で大容量高速通信により連携を強化し、手ぶれ補正効果や連写機能を向上させた。
しかし、RFマウントでは従来のEFレンズをそのまま使用することができない。EOS Rの発売に合わせ、EFレンズを装着するためのアダプター4種類が投入されるものの、アダプターの希望小売価格は1万5000~6万円と決して手頃な価格ではなく、これまでのキヤノンユーザーには負担となる。同時に発表されたプロ向けの大口径望遠鏡レンズはEFレンズだが、一般消費者向けではないため、「EFレンズの時代は終わりに近づいた」(発表会に参加していたカメラマン)との声も聞かれる。
新たなマウントを採用したのは今後のレンズの進化に対応できるようにするためだ。EOS Rの企画・開発に携わった海原昇二・イメージコミュニケーション事業本部ICB製品開発センター所長は、「これまでの制約から解放された自由なレンズを設計する」ためだと話す。「高画質を追求するうえでの根幹は高性能なレンズだ」(海原氏)。
それだけの重責を担う新マウントをミラーレスで展開するということからは、キヤノンの強い覚悟が伺える。
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