夏の甲子園が「夏フェス化」した必然の理由 人気を永続化させるために必要なことは何か

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言わば「甲子園ライトファン」の増加。野球雑誌に目を通し、ドラフト候補となる選手に目星をつけ、プレーを凝視する層を「甲子園コアファン」とするなら(この層も微増していると思う)、その周辺層として、甲子園という空間に訪れること自体が目的化した「ライトファン」が増加し、80万人以上の総観客動員数を叩き出し続けていると考えるのだ。

さらに言えば、彼(女)らにとっての夏の甲子園は、音楽界でいう「夏フェス」に近いのではないか。

猛暑の中のある特別な盛り上がり、野球(音楽)もさることながら、そこに行くこと自体が目的化する祝祭空間としての甲子園(フェス会場)――言わば、この10年ほどの夏の甲子園は、「甲子園フェス」と化しているといえよう。

では、この「ライトファンによるフェス化現象」は、どのようにして形成されたのか。私が見る限り、やはりメディアの力が大きいと思う。特に、テレビ朝日系『熱闘甲子園』の影響は、非常に大きいだろう。

「ライトファン」の獲得に寄与した要因

『熱闘甲子園』とは、夏の甲子園開催期間中、テレビ朝日で深夜に放送される、その日の試合のダイジェストを流すあの番組――と、ここで「その日の試合のダイジェスト」と書いたが、やや語弊がある。

というのは、試合やプレー以外の、ライトファンの心をくすぐる、さまざまなエピソードが随所に挟まれるからだ。

たとえば、選手同士の友情や、家庭環境などの「泣ける話」(ベンチ入りしない選手の話は定番)や、ユニークな選手の紹介などの「笑える話」、その他の「こぼれ話」。そしてこの10年、それらのエピソードが、番組の中で占める比率は、年々上がってきているように思われる。

夏の甲子園ファンの私は、むろん『熱闘甲子園』のファンでもあり、思い切って白状すれば、最終回に流される、その大会のダイジェスト映像を録画保存し、何度も見て(泣いて)いる者なのだが。

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