少子化を止める「優先順位の高い改革」とは? コマツ・坂根相談役インタビュー<前編>

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中原:おっしゃるとおりです。地方の大学はみんな金太郎あめのように見えてしまいます。私はさらに地方の大学改革を促進するためには、卒業する要件を厳しくする必要があると思っています。誰でも大学に進学できるように間口を広げたうえで、全員が必ずしも卒業できないシステムに改めていくべきです。たとえば、秋田の国際教養大学は卒業が難しいことで知られ、勉学に一生懸命に励まないと卒業ができません。その結果、大企業が相次いで秋田までわざわざ採用活動に訪れているといいます。

坂根:私が学生に言いたいのは、自分は将来どんな仕事をしたいのかという考えに基づいて、大学や企業を選んでほしいということです。現状では偏差値主義というか、合格するのが難しい大学がいいという考えで選んでいますから、もともと医者になるつもりがなかったのに、「この偏差値レベルなら難関の医学部を目指す」というおかしなケースが見られるようになっていますね。

地方大学の改革について話を戻すと、滋賀大学がデータサイエンス学部を設置しましたが、こういう需要が強い人材を育成する学部の学生であれば、企業側もぜひ採用したいということになるでしょう。地方に特色のある大学が次々と出てきて、学生と企業の人気が高まっていけばいい流れができるのではと思っています。

地方の大学改革は大学のトップと首長の責任

坂根:地方の大学改革は全国一斉には絶対にできません。地方自治体のトップが地元の産業を何とか強くしたい、特色を出したい、そのために大学がどういう存在であってほしい、といったビジョンをしっかりと持っていることが必要不可欠だからです。そのうえで、大学にも同じように情熱と力量を持ったリーダーが欠かせなくなりますね。

私は島根県出身ということもあり、島根や鳥取の大学へ講演に呼ばれていくことがありますが、地元の本気度を計る意味合いから、「首長と商工会議所の会頭と地元金融機関と地元産業のトップが出席しないと行かない」と言っています。結局のところ、自治体のトップである首長が本気で改革しようとしているのか、大学側にも本当に改革ができるリーダーシップをもった人材がいるのか、そこがいちばん大事なわけです。

中原:坂根さんのような優れた経営者が地方大学の経営に携わっていけば、強みを発揮した大学が相次いで生まれてくるのではないでしょうか。たとえば、今年4月に開学した長野県立大学では、元ソニーの社長だった安藤国威さんが阿部知事から熱烈にスカウトされて理事長となっています。

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