少子化を止める「優先順位の高い改革」とは? コマツ・坂根相談役インタビュー<前編>

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中原:私は政府が法人税を一律に減税するのではなく、地方へ本社機能を移転した割合に応じて税率を引き下げる方法を取ってほしかったと思っています。たとえば、本社機能の25%を地方へ移転した場合は法人税率を従来より5%引き下げ、50%移転した場合は10%引き下げ、75%を移転した場合は15%引き下げるといった形にすれば、大企業が地方へ移転するインセンティブは少しでも高めることができるのではないかと考えています。

地方自治体のなかでは、長野県の阿部守一(しゅいち)知事が企業誘致に一生懸命に取り組んでいます。県税である法人事業税と不動産取得税について全国でトップレベルの減税制度を設けて、市町村にも協力してもらい固定資産税の減額措置まで講じています。その効果が徐々に出始めているようですが、国もこうした自治体の少子化対策や地方創生への取り組みを支援するために、法人税減税の仕組みを柔軟に変えたほうがいいのではないでしょうか。

大企業トップの意識が変わらなければ地方移転は進まず

坂根:政府が減税でインセンティブを高めることに効果がないとは思いませんが、やはりなんといっても企業のトップの考えが変わらなければ、大企業の地方への移転はなかなか進まないでしょう。

坂根正弘(さかね まさひろ)/広島市生まれ、島根県育ち。1963年小松製作所(現コマツ)入社。2001年社長、2007年会長を経て2013年から現職。2017年2月から政府の「地方大学の振興および若者雇用等に関する有識者会議」の座長をつとめ、同年末には「地方大学改革の支援」や「東京23区など特定地域の大学定員増を原則認めない」ことなどを趣旨とする最終報告をまとめた(2018年5月に関連新法が成立)。「ダントツ経営――コマツが目指す「日本国籍グローバル企業」(日本経済新聞出版社)など著書多数(撮影:梅谷秀司)

経団連(日本経済団体連合会)に加入している企業のなかには、本社を地方に置いているところもあれば、創業地や中心事業所が地方にあるところはたくさんあります。たとえば、長野でいえばセイコーエプソンの本社があります。そういった歴史の長い企業の本社や創業地、中心事業所に勤める従業員を調べてみれば、必ず子どもの数は多いはずだと思います。企業のトップたちがそのことに気づいて、この国の少子化問題は自分たちにも責任があるのだと認識するべきなのです。

ここまで東京への一極集中が加速した背景には、中央集権下で大企業が東京に集まり、そして、一括して学生を採用する方針を取っているということなどがあります。当然ながら、学生が大企業に勤めたいと思ったら、東京の大学に入学したほうが有利だと思うのはやむをえないことです。コマツだけでなく、YKKのように本社機能の一部を富山に移転して、思い切って地方採用を始める企業がもう少し増えてくれば、東京偏重の流れは少しは変わり始めると期待しています。

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