GAFA以降のゲームルールにどう立ち向かうか 彼らの目指すもの、つまるところ金儲け

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そして、日本がなぜここまで徹底的に後れを取ってしまったのか、或いはなぜここまで世界が日本のずっと先を行ってしまったのか、その理由は色々と考えられるが、大きな要因のひとつが日本の経営人材の問題である。

この点について、学生のための就活情報サイトである外資就活ドットコムに載っている東京大学大学院工学系研究科技術経営戦略学専攻専門人工知能特任准教授の松尾豊氏のインタビュー記事『既得権者が甘い蜜を吸うだけの日本AIに未来はない~“資金の補給路なし” 負け戦と認識せよ』が大変興味深かった。

松尾氏によれば、日本のAI研究は、それを後方で支える機能で圧倒的に負けている。GoogleやFacebookはその後ろに巨大なマネタイズマシンがあり、常に資金が供給され続けている。中国のTencent、Alibaba、Baiduにも、同様な資金が流れ込む生態系ができ上っている。

日本企業の経営者の勉強不足

逆に、日本企業で世界のプラットフォームを取れた企業は一つもなく、現在、私たちが日常的に使っているiPhoneやGoogle、Facebook、Twitter、アマゾンの中に日本の企業は全くない。この20年間、負けの連続であり、絶対的優位だったはずの半導体や家電産業も陣地を失っている。
そして、これほど日本社会へのAI導入が進まない根本的な原因は、日本企業の経営者の勉強不足であり、「経営者は技術のことを分からなくてもいい」といった甘えがはびこっているからだと言う。

その上で、松尾氏は、もはや日本が逆転するチャンスはなく、「客観的に考えるとどう考えても勝ち目がない」と認識することで、初めてチャンスが生まれてくると言う。

このように松尾氏が嘆いている現状は、学生の就職人気ランキングに如実に表れている。最近、話題になったのが、ONE CAREERという就職サポート企業が発表した『東大京大・20卒就職ランキング:足踏みする総合商社、飛躍するコンサル』である。※大学生就職人気ランキング表

2020年に就職予定の東大・京大の学生へのアンケート結果だが、ここではランキングの上位6社までをコンサルティングファームが独占、トップ10企業のうち8社を占めている。その一方で、総合商社、大手メーカー、インフラ企業が軒並み順位を下げている。

『the four GAFA 四騎士が創り変えた世界』(書影をクリックすると、アマゾンのサイトにジャンプします)

下積みを前提としたキャリア、つまり総合職として学生を採用して一括配属したり、2〜3年でジョブローテーションを繰り返すキャリア形成が、もはや上位校の学生の志向にマッチしていないのである。

GAFAが支配する世界の行きつく先は、「少数の支配者と多数の農奴が生きる」ディストピア(暗黒郷)なのか、或いはその恩恵を全ての人々が享受するユートピア(理想郷)なのか。

ギャロウェイ教授の結論は、次の通りである。「このかつてないほどの規模の人材と金融資本の集中は、どこに行き着くのだろうか。四騎士のミッションは何なのか。がんの撲滅か。貧困の根絶か。宇宙探検か。どれも違う。彼らの目指すもの、それはつまるところ金儲けなのだ」。

このGAFA以降のゲームのルールにどう立ち向かうのか。各人一人ひとりの世界観と行動力が問われているのである。

堀内 勉 多摩大学社会的投資研究所教授・副所長、HONZ

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ほりうち つとむ / Tsutomu Horiuchi

外資系証券を経て大手不動産会社でCFOも務めた人物。自ら資本主義の教養学公開講座を主催するほど経済・ファイナンス分野に明るい一方で、科学や芸術分野にも精通し、読書のストライクゾーンは幅広い。

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