都内「助成金漬け」保育園、ずさん経営の末路 経営悪化で保育士が一斉退職、突然の閉園に
この保育士の一斉退職騒動に対しては、系列園から職員を異動させることで乗り切った。しかし、5月分の給与も支払いが遅れ、ふたたび退職を希望する保育士が続出。2018年6月末で閉園した。ボーナスの支給も遅れていたようである。
A社を退職した元職員によると、A社が運営する園では一般の保育園よりも高い給与水準を提示されていた。園長が一律35万円、保育士は25万円以上の月給となっているうえ、借り上げ社宅があり、年2回10日の連休をとれるという好条件だったという。また、保育士は人材紹介会社を通して採用にいたっており、それも安心材料となっていた。
しかし、実際に支払われた給与は提示額とは大きく異なっていたという。さらには人材紹介会社への利用料の支払いも滞っており、トラブルになっているという。
経営悪化の原因は?
ここまで資金繰りが悪化した背景には、A社が「助成金頼みの経営」だったことがある。企業主導型保育の助成金は「公益財団法人 児童育成協会」から振り込まれるが、初回の助成金交付までの運営費として自己資金は当然必要となる。経営者は待機児童が集中する東京に事業性を見いだし、補助金頼みで甘い資金予測をした結果、資金繰りに行き詰まったものとみられる。
保育園は乳幼児の生命を預かり、保護者たちの生活を支える大切なライフライン。待機児童の解消は喫緊の課題であるとはいえ、自転車操業状態で運営するような事業者に助成が認められることは問題である。
また、A社のような不適格な事業者は、保護者だけでなく保育士の生活基盤をも大きく揺るがすことになる。保育士は売り手市場なのですぐにも転職先が見つかりそうだが、家庭を持つ保育士たちにとって転職のハードルは低くない。