保育園無償化が効果ゼロに終わる3つの理由 「無償化」でなく「質向上」に資金を投入すべき
幼児教育の無償化政策は、幼児期の教育がその後の学校教育だけではなく、成人以降の職業や生活満足などにも影響を与えることが明らかにされて以来、国際的にもホットなトピックである。
乳幼児期の教育政策に関するプロジェクトは、OECD(経済協力開発機構)加盟国代表が行うランキングでも、2030年の教育を考えるプロジェクトに続く第2位となり、教育政策として極めて重要な論点となっている。
2018年5月には、ルクセンブルク政府とOECDの幼児教育ネットワークが会合を開き、21世紀に求められるコンピテンシー(汎用能力)の育成のためには、どのようなカリキュラムを考えるのが必要であるのかが議論された。同じ月には、フランス・パリにあるOECD本部で、幼児期の教育と小学校教育の教育をどのように接続するのかも議論された。
こうした動向を踏まえるならば、日本における幼児教育の無償化は、国際的に見ても、必要かつ重要な政策であるのは間違いない。しかしながら、多くの人がすでに指摘しているように、問題はその条件にある。
他国に比べ無償化対象時間が長い
第1に、対象とする時間である。
日本では、保育標準時間(1日11時間)までの無償を想定しているが、端的にいって長すぎる。
一方、先進的に幼児教育無償化を進めたイギリスでは、週30時間年38週の無償化となっている。フランスでも「幼児教育の時間」とされる時間以外は、保護者から保育料を徴収している。他の欧州各国でも英仏同様である。
日本と同じように保育標準時間までの無償を想定しているのは韓国だけである。
現在のように1日当たり11時間を無償化するのではなく、短時間と長時間での無償化によって、どのような効果に違いがあるかを明確にし、長時間の無償化にかかる経費を削減し、それらを質の向上に回すべきである。
小学校教育でも授業の時間数が問題とされるように、子どもにとって教育の効用を考えるときには、教育をする「意味ある時間」というのが重要な要因である。
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