保育園無償化が効果ゼロに終わる3つの理由 「無償化」でなく「質向上」に資金を投入すべき
第2に、対象となる施設範囲である。
今回、幼児期のナショナルカリキュラムである「幼稚園教育要領」「保育所保育指針」「幼保連携型認定こども園教育・保育要領」では、3歳以上の教育内容について整合性が図られ、ほぼ同一の内容となっている。
その内容に基づいて教育に当たれるのは、専門の資格としての幼稚園教諭や保育教諭、保育士の人のはずである。ところが、認可外などの保育施設では、この資格の基準を満たす人員やその教育を行うにふさわしい施設基準が満たされていない。
それがそのまま、時には無資格者も含めてのシフト勤務のなかで、幼児教育という名のもとに無償化される。
さらに、研修する権利があり、免許更新制度も準備されている教諭に対し、保育士には研修の権利が法律では認められていない。ようやくキャリアアップ研修制度が準備されたが、それも常勤専任の保育士で年数も園での受講人数枠も決められている。
保育施設を評価する仕組みがない
幼児教育は、教育の専門家が行うべき事柄である。
だが、それが無償化の範囲となっている対象施設や時間すべてにあてはまらない状況になっている。つまり、無償化しても幼児教育の質はこれまでと何も変わらない。これで無償化の効果があると言えるだろうか。
他国では無償化により、就園していない子どもが就園できるようになり、小学校以上の基礎部分が形成される。一方、日本ではすでに3〜5歳で多くの子どもたちが就園しているため、無償化の効果は小さいとみられる。
今回の無償化政策は、保護者の保育ニーズに応える目先の人気取り政策であり、長期的な人材育成への政策になっておらず、「恵まれない子どもたちに優れた教育を」ということにもならない状況になりかねない。
第3には、無償化だけが議論され、施設を評価する仕組みがないことである。
幼児教育無償化を長時間で実施している韓国であっても、幼児教育の無償化にともなって、質向上のための教育評価制度を同時に設けている。それによって、説明責任を果たす構造を有している。これに対して日本では、その施設を評価する仕組みがない。
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