コミックスの「累計部数」は時代遅れの指標だ マンガアプリがマンガの売り方を激変させた

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今、マンガでもまったく同じことが起こっている。筆者が取材したマンガアプリの運用責任者は、複数の人間が「コミックスの部数至上主義の時代は終わる」「部数以外の指標を世の中に広めていかなければならない」という発言をしていた。収益源が多様化するとは、指標を多様化させなければならないということである。

マンガ業界がなぜかつて部数だけを競ってきたかと言えば、出版業界は再販制度(再販売価格維持制度)があり、書店では原則的に値引き販売ができないからだ。言い換えると雑誌にしろコミックスにしろ、単価が数百円で固定されていた。

だから売り上げを伸ばすには「客数=部数」を伸ばすしかなかった。しかし紙の本以外の場所――電子書籍、アプリ、ウェブでは再販制度がない。ゆえにいくらでも単価を変えられる。これは「値引き」ができるだけではない。

マンガのキャラクターを使った広告を単価数十万円や数百万円で受けることもできるし(取引先や商品によって価格は当然違ってよい)、電子書籍全巻セットに作家との飲み会に参加する権利を付けて数万円から十数万円で販売してもいい――これらはすでに行われている。

要するにマンガアプリ台頭以降のマンガビジネスとは、ユーザーの動画広告視聴で1回数円得るものから今言った数十万円から数百万円単位のものまで、レンジの広い多様な商品/サービスを売って成立するものになったのだ。紙のコミックスの部数は、依然重要ではあるものの、もはや唯一絶対の指標ではない。

まだ「○万部突破」ばかり気にしてるの?

飯田 一史 ライター

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いいだ いちし / Ichishi Iida

1982年青森県むつ市生まれ。グロービス経営大学院経営研究科経営専攻修了(MBA)。小説誌、カルチャー誌、ライトノベルの編集者を経てライターとして独立。マンガ家や経営者、出版関係者のインタビューも多数手がける。著書に『ベストセラー・ライトノベルのしくみ』(青土社)、『ウェブ小説の衝撃』(筑摩書房)、『読者ハ読ムナ(笑)』(共著、小学館)、『マンガ雑誌は死んだ。で、どうなるの?』(星海社新書)。

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