コミックスの「累計部数」は時代遅れの指標だ マンガアプリがマンガの売り方を激変させた

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2013年に講談社モーニング編集部とexciteが組んだ「Dモーニング」を皮切りに、NHN PlayArtの「comico」、DeNAの「マンガボックス」、小学館裏サンデー編集部(現・マンガワン事業室)の「マンガワン」、集英社ジャンプ編集部の「ジャンプ+」、LINEの「LINEマンガ」などが続いた。

こうした先発のアプリが軌道に乗りはじめたことを受け、2016年から2017年にかけて双葉社「マンガリーフ」、少年画報社の「マンガ少年画報社」アプリ、スクウェア・エニックスの「マンガUP!」、コアミックスの「マンガほっと」など多数の出版社発のマンガアプリが続々リリースされた。2018年には講談社の「コミックDAYS」「パルシィ」や集英社の「ヤンジャン!」などが最後発として始動した。

こういうマンガアプリの多くは、毎日1枚から数枚の無料チケットがユーザーに配られる(実際にはチケットと呼ばず「ライフ」という呼び方であったり名前はさまざまだが機能は同じだ)。 

読者はそのチケットを使ってアプリ内のマンガを「レンタル」する。「1回読み切り」であったり、「24時間読み返し可能」であったりするが、要するに所有はできず、再び読みたければまたチケットを使うか、紙のコミックスや電子書籍を買うしかない。

作家育成・作品宣伝の役割がアプリに

このような仕組みを持つ「LINEマンガ」や「マンガワン」などの1000万を超えるダウンロードとDAU(デイリーアクティブユーザー、1日の利用者)が数十万を超えるマンガアプリが、大半の紙のマンガ誌を上回る影響力を持つようになった。

「LINEマンガ」で配信された作品は、電子だけでなくリアル書店での紙のコミックスの売り上げにも影響を与えるほどだ。かつてはマンガ雑誌が作家や作品の「育成」と「宣伝」を担っていたが、今ではその役割はマンガアプリに移行している。

なるほど、「紙の雑誌」に連載した作品をまとめて「紙のコミックス」を売っていた時代から、「マンガアプリ」に掲載した作品の「電子書籍」を売る時代になったのか――と思うかもしれない。おおむね間違ってはいないのだが、現在起きている変化は単にそういう話ではない。

ここで「むしろ雑誌やコミックスの部数(だけ)を気にしている人間こそが旧時代の遺物になりつつある」という話に戻ってみよう。

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