日本人は「梅毒」の危険と影響を知らなすぎる いま若い女性の間で急増している

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若い女性の梅毒で危惧されるのが、妊婦が感染した場合の胎児への影響である。流産や死産のほか、赤ちゃんの目や耳、肝臓などに障害が出る先天梅毒になる恐れもあるからだ。尾上医師によると、梅毒に感染した母親から胎児への感染リスクは60~80%、妊婦が無治療の場合には、40%の子が死産または出生後まもなく死亡する可能性があるとされている。2012年の全国の報告数は妊婦梅毒3人、先天梅毒4人だったが、2016年にはそれぞれ33人、14人にまで増加している。

疑わしいときは積極的に検査を

梅毒の増加に伴い尾上医師が警戒しているのは、妊婦梅毒・先天梅毒のほかにはHIVである。

「何らかの性感染症にかかっているケースでは、性的な接触が頻回にあることが多く、ほかの性感染症にもかかっている可能性が高いといえます。梅毒の場合、梅毒トレポネーマによるしこりや発疹などの皮膚症状で皮膚のバリア機能が損なわれて、ほかの性感染症にもかかりやすい状態であり、男性の同性間性交渉による患者が多いHIVを合併することが多いとみられています」

HIVはかつては「死の病」として恐れられたが、現在は強力な抗HIV療法が普及しており、毎日、抗HIV薬を服用すれば、ほぼ100%進行を抑えられ、HIVではない人とほぼ同程度の寿命が得られるようになっている。いわば、生活習慣病と同じような慢性病の1つになってきた。これらの梅毒周辺の感染症を確実に防ぐために、尾上医師は「不特定多数との性的接触をしない」「コンドームの適正な使用」などとともに、疑わしいときは積極的に検査を受けることをすすめる。

「梅毒は、感染の機会から約3(~6)週間後が検査の目安になります。HIVは感染の機会から2カ月以降に検査を受けるのが原則ですが、2週間以降で可能な検査もあります。まず、保健所や医療機関などに相談するとよいでしょう」

(文:近藤昭彦)

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