不安定すぎる日経平均は一段と下落するのか

トルコリラ暴落や米中紛争の背後にあるもの

ただし、内外(日本を含む世界経済)の実態はそう悪くはない。

たとえば、トルコリラの暴落を考えると、トルコリラ相場自体は、トルコ自体が抱える国際収支赤字の大きさや高インフレ、また隣国シリアの内戦などの地政学的リスクを考えると、安定にはまだまだ程遠いと言えよう。

しかし、先週騒がれた「欧州銀行のトルコ向け債権」については、欧州主要国の中で、トルコ向け債権が最も大きいのはスペインで、2018年3月末時点で809億ドルとされている(BIS=国際決済銀行統計)。これに対し、スペインの金融機関のユーロ圏内における総貸出残高は、同時点で16兆5883億ユーロ(当時のユーロ相場で換算して約20.4兆ドル、ECB=欧州中央銀行による)で、それに対するトルコ向け債権の比率は0.4%に過ぎない。あたかも欧州銀行がトルコ向け債権の不良化で、巨額の損失が出るように騒ぐのは、行き過ぎだと考えられる。

また、このところ不安視されている、「米中貿易戦争」の行方については、前述のように、中国商務省が「商務次官がアメリカを訪問、事務レベルで協議する」と16日(木)に公表した。この協議の日程については、WSJ(ウォール・ストリート・ジャーナル)紙は、22日(水)~23日(木)ではないか、と報じた。だとすれば、23日(木)には、当初米国側が打ち出した、500億ドル分の対中輸入に対する報復関税のうち、既に実施されている340億ドル分を除いた残りの160億ドル分について、関税発動が予定されているため、その直前の会合だということになり、注目度が高まっている。

また17日(金)には、WSJ紙が「中国と米国の通商担当者が、11月の多国間の首脳会議をメドとして貿易摩擦の解消に向けた交渉計画を立てている」と報じている。アメリカと中国の両政府それぞれに、強硬派と穏健派で割れており、双方とも「貿易戦争」についての姿勢は統一されていないと聞く。述べたような米中間の協議の機運も、両国政府の穏健派が主導したものと推察され、協議が進んだとしても、その内容で自国の強硬派を説得できるかどうかも不透明だ。このため、手放しの楽観は禁物だし、話が前進するとしても、WSJ報のように、すぐにではなく、11月に向けて(おそらく米中間選挙「後」を意識したものだろう)、といった程度のゆっくりした時間軸だろうが、それなりに事態が打開される可能性は閉ざされてはいないと言えるだろう。

もっとも、肝心な日本企業の収益は悪くない。日本経済新聞の集計(金融を除く主要企業1588社が対象)によれば、2018年4~6月期決算については、税引き後の利益は前年比28%も増加し、増益企業は全体の56%、最高益企業は24%を占めるという。

こうした企業業績の堅調さを背景に、東証1部全体の予想PER(株価収益率、12カ月先予想ベース、米ファクトセット社による)は、17日(金)現在で12.8倍と、第2次安倍政権発足後の推移レンジの概ねの下限である13倍を割り込んでいる。直近では7月6日(金)に12.9倍と13倍割れが短期的にあったが、さらに13倍割れを遡って調べると、2016年1~6月の、年初の世界同時株安から6月の「ブレクジットショック」に当たる時期となる。その頃並みの売られ過ぎに日本株は陥っていると言えよう。

短期的には乱高下が継続か

こうした内外実態面の堅調さ、特に日本企業の収益の好調さから、大きな流れは国内株高を予想する。しかし最近の乱高下で、投資家は心理面で警戒感を抱いており、海外短期筋主導の日経平均先物の激しい売買も、繰り返される恐れがある。

今週の日経平均については、流れは上方向だと考えるし、過度の悲観を抱く必要はない。だが大きく上下に振れることが続く可能性も否定できない。こうした見解を背景に、今週の日経平均株価の予想レンジは、かなり幅が広いが、2万1950円~2万2600円を予想する。

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