剣が峰の関西経済、中国輸出が減速、頼みの綱は薄型テレビの大型投資だが…

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その突出投資の代表が冒頭のシャープの堺コンビナートだが、「将来的な税収や地域の雇用が増え、堺市の活性化につながる。これだけ大きなプロジェクトがあることは地元にとって非常に心強い」(堺市の企業誘致担当者)。すでに1万人の建設関係者らの利用で地元飲食店などの客数は上昇。堺駅周辺ではアパグループを筆頭に、ビジネスホテルの新設・増改築計画も進行中だ。

機械化された装置産業ゆえ、投資額の割に工場労働者は少ないと言われるが、それでも製造ラインや事務、給食・清掃などコンビナート全体で5000人規模の雇用(他工場からの配置転換含む)が生まれる見込み。臨海部従業員数が01年ピークの約1万5000人から1万人割れまで減少した堺市にとって、この効果は小さくない。シャープ進出の副次効果もある。「数年前は市が誘致しても全然ダメだった」(関西大学大学院の宮本勝浩教授)が、堺浜の先端中小企業クラスターには昨年42社が応募し、東京本社の企業を含む11社の進出が決定した。

パナソニック傘下のIPSアルファテクノロジが総工費3000億円のテレビ用大型液晶パネル新工場の建設に着工したばかりの兵庫県姫路市も「ホテルやタクシーの利用者が増え始めている。雇用をはじめ、大きな地域への経済効果を期待している」(企業立地推進課)。パナソニックは尼崎市でもプラズマテレビ用パネルの新工場を建設中。こちらも投資額は2800億円と巨額だ。

関西社会経済研究所の試算では、総投資1兆6000億円のこれらの3プロジェクトの経済波及効果(付加価値ベース)だけでも建設など初期投資分で約6000億円、フル稼働時の製品出荷分で1・4兆円となる。単純計算では関西の05年度の名目地域総生産(GRP)84兆円に対し1・7%の浮揚効果がある。関西では70ページ図に示すとおり、パナソニックや三洋電機のリチウムイオン電池、住友金属工業の和歌山新高炉など大規模投資が目白押し。これらを加えれば、インパクトがさらに大きくなるのは確実だ。

ただし、地元が期待する新工場と地元中小企業との取引拡大となると簡単でない。大阪湾岸の五つの商工会議所が結成した研究会の座長も務める神戸国際大学の中村智彦教授は、液晶など新工場の特性ゆえに、地元に多い大量生産の「工業型」にでなく、ハイテク技術に強い「化学型」に取引機会が多く生まれる可能性を指摘する。恩恵は一律ではない。

世界需要が旺盛な液晶や太陽電池などハイテク産業で先行する関西は、輸出面で次の日本経済をリードしうる好位置にある。風雲急を告げる世界経済は、関西ハイテクに水を差すほど悪化するのか。関西はその行方をかたずをのんで見守っている。

(週刊東洋経済)

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