「羽田アクセス線」で激変、東京の鉄道勢力図 京急は本数増で対抗、東急は「蒲蒲線」に意欲

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東急蒲田駅に出入りする池上線と多摩川線の車両。東急・JRの蒲田駅と京急蒲田駅を接続する「蒲蒲線」構想に近年注目が集まっている(撮影:尾形文繁)

地図で見るかぎり、渋谷―羽田空港間は羽田アクセス線と比べて遠回りのようにも思えるが、東急電鉄の髙橋和夫社長は、「将来の羽田のキャパシティを考えるとJRさんだけでは足りず、複数の交通手段を存在させる必要がある」と発言、蒲蒲線の重要性を強調する。

蒲蒲線で東急とつながる京急は、従来から「成り行きを見守っている」(広報)と静観の姿勢を貫いてきた。しかし将来は、JR東日本が実現を目指す羽田アクセス線への対抗軸として東急とタッグを組む可能性がある。

京急蒲田駅の「高低差」が問題

問題は、東急と京急では2本のレール間の幅(軌間)が異なることだ。そのため、京急蒲田で空港線に乗り入れるわけではなく、「今のところは、いったん乗り換えていただく」(髙橋社長)としている。京急蒲田駅の空港線ホームは地上階にあるが、蒲蒲線ホームは地下設置が予定されており、乗り換えはやや不便だ。

空港線に乗り入れるためには、軌間が異なる路線を自由に走れるフリーゲージトレイン(FGT)の開発を待たねばならないなど、越えるべきハードルは高い。さらに、京急蒲田では両路線に高低差があるため線路の直通はできず、蒲蒲線を大鳥居まで延伸して直通させる必要もある。延伸工事を行うと、全体の事業費は3000億円を超える。

交通政策審議会答申では羽田アクセス線と蒲蒲線、どちらも高い採算性が見込まれているが、もし両方とも建設された場合、はたして計画どおりの収益を上げられるだろうか。鉄道だけが羽田アクセスではなく、首都高速中央環状線の開通で空港バスが格段に便利になったエリアもある。事業化に関しては、あらゆる可能性を考慮して、慎重に見極めを行うべきだろう。

大坂 直樹 東洋経済 記者

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おおさか なおき / Naoki Osaka

1963年函館生まれ埼玉育ち。早稲田大学政治経済学部政治学科卒。生命保険会社の国際部やブリュッセル駐在の後、2000年東洋経済新報社入社。週刊東洋経済副編集長、会社四季報副編集長を経て東洋経済オンライン「鉄道最前線」を立ち上げる。製造業から小売業まで幅広い取材経験を基に現在は鉄道業界の記事を積極的に執筆。JR全線完乗。日本証券アナリスト協会検定会員。国際公認投資アナリスト。東京五輪・パラにボランティア参加。プレスチームの一員として国内外の報道対応に奔走したのは貴重な経験。

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