「羽田アクセス線」で激変、東京の鉄道勢力図 京急は本数増で対抗、東急は「蒲蒲線」に意欲

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東京モノレールは、親会社のJR東日本が進める羽田アクセス線構想について様子見の構え(撮影:今井康一)

一方の東京モノレールは2002年からJR東日本の子会社となっている。羽田アクセス強化に向けて東京駅へ延伸するという独自構想を持つが、首都圏全体に効果があるJR東日本の羽田アクセス線構想と比べると影が薄い。

運行本数増で対抗する京急に対し、東京モノレールは「羽田アクセス線の詳細が決まっていない現状では、対策について検討は行っていない」(同社広報)と、当面は様子見の構えだ。

ただ、羽田アクセス線が実現したとしても、東京モノレールは国際線ターミナルに乗り入れていることから、京急同様、国際線利用者の流出は防げそうだ。天王洲アイル、流通センターなどへの通勤路線として存続させるといった形で、羽田アクセス線とのすみ分けが図られるかもしれない。

大田区が推進する蒲蒲線

羽田アクセス路線を新設する構想はほかにもある。押上と泉岳寺を東京駅付近で結び、成田空港と羽田空港を直結させる「都心直結線」は交通政策審議会で検討されたものの、採算性でほかの候補路線に劣り、対象から外れた。

もう1つは大田区が推進する「蒲蒲線」(新空港線)である。東京急行電鉄多摩川線の矢口渡付近から京急蒲田までの約1.7kmに新線を建設し、分断されている東急・JRの蒲田と京急蒲田を鉄道でつなぐ。JR東日本の羽田アクセス線構想が飛び出すはるか昔、30年近く前から検討されてきた構想であり、大田区は事業費を1260億円と試算している。

鉄道事業者として蒲蒲線に関心を寄せているのが東急である。蒲蒲線が完成すれば、東急沿線の住民は渋谷に出なくても、東横線の多摩川駅から羽田に向かうことができるため、東急沿線住民のメリットは大きい。また東急側は東横線と多摩川線を結び、渋谷から蒲田まで直通させるとしており、東京メトロ副都心線、西武鉄道池袋線、東武鉄道東上線など首都圏西部の広範なエリアからの集客をもくろむ。

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