「羽田新線」に財政投融資という仰天アイデア 安倍「経済対策」はリニアへのメリット乏しい

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2015年に報道陣に公開されたリニアの実験線

「リニア中央新幹線の全線開業を最大8年間前倒しして、整備新幹線の建設を加速化する」

安倍晋三首相は、8月2日に閣議決定した経済対策で、財政投融資を鉄道インフラに充てることを宣言した。

JR東海は「ありがたい話」(広報)と、歓迎の姿勢を見せつつも、「スキーム等の検討はこれからの話」という。本当にJR東海にメリットがあるどうかはスキーム次第だ。

貸し付け総額は3兆円

想定されている案は、国が直接JR東海に貸し付けるのではなく、鉄道建設・運輸設備整備支援機構経由での貸し付けだ。ただ現行法では、同機構は財投を使った貸し付けができないため、法改正も検討されている。

貸し付け条件については、報道によると融資総額は3兆円。40年間にわたって金利0.4%程度で貸し付けるという。2016~2017年度の2年間で1.5兆円ずつ貸し付けるという観測もあったが、肝心のJR東海の工事進捗状況が、「まだトンネルの先進坑を掘り始めた段階。大断面の本坑を掘るのはずっと先の話」(JR東海)。だとしたら、いきなり3兆円が手元に転がりこんできても使い道に困るかもしれない。

JR東海の歴史は債務削減との戦いだったともいえる。同社が発足した1987年度の長期債務残高は5兆2693億円だった。その後、毎年少しずつ債務を返済し、2016年3月末の有利子負債残高はようやく2兆円を切った。JR東海はこの成功体験から、長期債務残高が5兆円程度なら、減価償却費などを元に確保するキャッシュフローで着実に削減できると考えている。

東京と大阪を結ぶリニア計画の総事業費は9兆円を越える。事業を2段階に分け、第1段階は品川―名古屋間にとどめて長期債務残高を5兆円程度の水準に抑える。2027年度の開業後は10年弱の空白期間を設けてその間に長期債務をある程度減らした後であらためて名古屋―大阪間の建設に着手し、2045年に全線開業するというスケジュールだ。

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