「羽田新線」に財政投融資という仰天アイデア

安倍「経済対策」はリニアへのメリット乏しい

実験は山梨で行われた

翻ってJR東海の場合はどうか。2016年3月期の売上高は1兆7384億円だった。リニア開業前に売上高が2兆円に届いたとしても、長期債務だけで5兆円。借入金返済の原資である売上高は、他社と比べてあまりにも少ない。つまり、債務返済リスクが高いように思える。

この債務が財政投融資に置き換わることで、JR東海にはどのようなメリットがあるのだろうか。米格付大手・ムーディーズのチャヤ・カイラシュ・シニア・アナリストは、「民間から借りても政府から借りても信用レシオに関する見方は変わらない。だが、何かあった場合に政府のサポートを受けられると考えられるのはポジティブな要因」と解説する。一方で、「政府の意向を受け止めないといけないかもしれない」ことが、ケースによってはネガティブ要因になりうると示唆している。

高格付けはリニアを織り込み済み

ムーディーズはJR東海に対して国内最高位のAa3の格付けを付与している。もちろん「リニア案件は織り込み済み」(カイラシュ・アナリスト)だ。JR東海が自社の営業エリアで非常に強固な市場地位を確立していることに加え、東海道新幹線がもたらすキャッシュフローが潤沢だからというのが理由だ。ムーディーズの日本政府の格付はA1。つまり、JR東海の格付けは日本政府よりも高いのだ。

ただし、JR東海の高格付けはリニア建設が順調に進むことが前提だ。「工期が2年遅れ、コストが2割アップすると、投資額が6.6兆円に拡大する」(カイラシュ・アナリスト)。この場合はJR東海の格付けにも悪影響を及ぼす可能性もあるという。ただ、政府がサポートするのであれば日本政府の格付けを下回ることはないというのがカイラシュ・アナリストの見方だ。

このように、現在伝えられている財政投融資活用のスキームでは、JR東海にとって、民間調達先を探す手間が省ける、金利がわずかながら安くなる程度のメリットしかなく、安倍政権がわざわざ巨額の資金を投じる意義を見いだせない。

しかし、リニア以外に財政投融資を活用するとしたら話は別だ。安倍首相の経済対策では、リニアだけでなく、整備新幹線への財政投融資支援も盛り込まれている。リニア同様、鉄道・運輸機構を通じた、現在工事中の北海道、北陸、長崎新幹線への財政投融資活用が検討されている。工事や用地買収などの事業費に充てられ、開業前倒しにつながるという。

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