日本人は「トルコ経済」のヤバさをなめている 田中角栄流?エルドアン大統領の経済手腕

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トルコの企業にとっては、外貨建ての借り入れが倍近くになっている計算であり、「トルコの財閥は欧州の金融機関と債務帳消し交渉を行っているとの話も流れている」(在イスタンブールの日本人金融関係者)という。

通貨防衛のためには金利の引き上げを今すぐにも行わなければならない。ところが、エルドアン大統領は「保有しているドルやユーロなどの外貨資産や金塊を売って、リラに換えてほしい」と国民に訴えたことで、自身の大統領としての資質や、トルコの経済政策に対する不安を駆り立ててしまう逆効果をマーケット関係者に与えた。

対アメリカ関係改善は避けて通れない

こうした中、トルコは、エルドアン大統領への支持と不支持で真っ二つに割れており、支持しない層は安全資産として金や外貨を買い急いでいる。利上げをしない場合、残された数少ない手段は、外貨預金の強制封鎖などの資本規制だが、「対外信認がゼロになり、そこまでは踏み出せない」(前出の関係者)との見方が一般的だ。

リラ下落の要因の一つである対アメリカ外交に関しても、先が読めない。強力な指導力を売りとするエルドアン大統領が外交面で譲歩し、アメリカの要求に応じて牧師を釈放すれば、メンツが潰れてしまう 。

一方、「アメリカ第一主義」を貫くトランプ大統領も妥協の構えはない。11月の中間選挙を控え、牧師問題で強硬姿勢を取り、支持基盤であるキリスト教福音派から得点を稼ぎたい思惑があるようだ。トランプ大統領は、トルコ政府の2閣僚を制裁対象に指定したのに対し、エルドアン政権も米政府の2閣僚に対する報復制裁を発表。また、アメリカ側はトルコ製の鉄鋼とアルミニウムの関税率を倍に引き上げることを承認し、リラ急落に拍車が掛かり、貿易戦争の様相を呈している。

強い指導者としてトランプ大統領と渡り合うロシアのプーチン大統領や中国の習近平国家主席は、相応の経済力を背景とし、経常収支も黒字である。これに対し、トルコはリラ防衛のための中央銀行準備金に事欠くという状況にある。トルコはロシアや中国のほか、関係が深い資源国のカタールに支援を要請するというシナリオも考えられるが、西側の経済制裁に直面するロシアにトルコを支援する余裕はなく、中国やカタールも今回の対立に巻き込まれるのは避けたいだろう。

このため、最終的にトルコは対アメリカ関係改善に踏み出さざるをえないと見る向きは少なくない。トルコの消息筋は「アメリカで対イラン制裁違反に問われたトルコ人との交換など水面下の合意を通じ、アメリカ人牧師を釈放する可能性もあるのではないか」と予想している。

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