日本人は「トルコ経済」のヤバさをなめている 田中角栄流?エルドアン大統領の経済手腕

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リラの信認を回復するためには、アメリカなど国際社会との協調が欠かせない。だが、トルコはロシアや中国などに支援を仰ぐ構えを見せ、マーケットが期待する正攻法の利上げにも消極的で失望売りを招いている。

「このままでは経済的にもたない」(在トルコ日本人経済関係者)状況であり、トルコ中央銀行の金融政策決定会合が予定されている9月13日が転換点となるか、週末を挟んだ「犠牲祭(イスラム教の祭典)」の大型連休を迎える8月下旬に、エルドアン政権が何らかの妥協策を出してくるのではないかとの観測が浮上している。

経済手腕を評価する声は少なくない

今後の状況を予想する前に、エルドアン大統領の人物像や、最近のトルコ経済の動向を簡単に見てみよう。エルドアン大統領は2002年の総選挙で自らが率いたイスラム系の公正発展党(AKP)を勝利に導いた後、トルコが堅持してきた政教分離の世俗主義を捨ててイスラム化を推進。また、欧州連合(EU)への加盟が実現しない中、中東諸国や中国などとの関係を深め、欧米を重視したトルコの伝統的な外交姿勢も修正してきた。

アラビア文字表記の廃止や、脱イスラムなどエリート主導で西欧に追随することを目指した建国の父ムスタファ・ケマル・アタテュルク初代大統領率いる共和人民党によってトルコの民衆は信仰を制限されるなどして抑圧されてきた。これに対して、エルドアン氏は大衆に寄り添うポピュリスト的な指導者として、主に低所得者層から絶大な支持を集めている。

エルドアン大統領は、世俗主義の守護者だった軍の影響力を弱め、2017年4月の憲法改正により、儀礼的な立場だった大統領に実権が集中する大統領制への移行を実現し、独裁色を一段と強めた。政権に批判的だったメディアには圧力が掛けられ、ソーシャルメディアでも監視の目が厳しくなっている。エルドアン大統領は、強力な指導力を発揮して、トルコの前身であるオスマン帝国のような強国の復活を目指しているのではないかとささやかれる。

もっとも、経済手腕を評価する声は多い。2008年のリーマンショックによる世界的な経済危機では停滞したものの、中東・北アフリカ最大の経済規模を持ち、G20メンバーの有力な新興経済国として有望な投資先として経済成長を遂げてきた。共和国建国100周年の2023年までに世界10大経済国入りを目指している。

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