11人に扮した写真は、京都市立芸術大学で11日間にわたって撮影された。資生堂のメイクアップアーティストがヘアメイクに2~3時間、衣装を着けるのに約2時間、それからようやく本番の撮影となる。
あとからコンピュータで合成するのだが、撮影にはデジカメではなくフィルムを使った。画面上の簡単な操作だけでは、自分がその人物になったことにならない、という森村さんのこだわりがあるからだ。絵の中の人物になることで、その絵をより深く理解できるのだという。
とはいえ、350年前の人に扮するのは、そう簡単ではない。
「ベラスケスの絵は写実的なようでいて、筆のタッチが粗いので、衣装や髪飾りのディテールがよくわからないのです。17世紀のファッションを研究し、想像を働かせて作らなくてはならないものもありました」
右手前に寝そべる犬は、絵の中と同じスパニッシュ・マスティフ犬だ。日本にいるブリーダーを探して連れてきてもらった。その後ろに立つ青いドレスの女性は、「すべてを知る人」と呼ばれるミステリアスな存在。口の中に脱脂綿をいっぱい詰めて、顔の輪郭を作った。このような舞台裏を見せる写真も展示されている。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら