まあ、そのお陰で歩数計が売れに売れた。当時、パーティの手土産となればどこもかしこも歩数計だった。一時期多い人は、7個か8個は持っていたはずだ。1万歩神話によって、その業界が儲かったとすれば、まあ、それでいいのかもしれない。
ところで、「8000歩で十分」という説は正しいといえるのだろうか。
健康に合わせて運動をしたほうがいい
だいたい、歩数だけが健康のバロメーターになるはずがない。やがては、「8000歩だとか、1万歩だとかと決め込む必要はない。その人の体調、気分に合わせて、3000歩でもいいし、2000歩でもいい」という医者が出てきて、歩数問題はカタがつくことになるだろう。しまいには、無理して歩かないほうが健康のためにはよい、という説が登場するかもしれない。
端的にいえば、「運動して健康になる」というのは、神話のようなもの。歩けば長生きする、というのは馬鹿げている。現に私の知人は、雨の日も風の日も、毎日律義にジョギングをしていたが、あるとき、腰椎が摩耗して歩けなくなった。痛いという。65歳前後だったと思う。手術をしても治らず、リハビリのために温泉地に数カ月治療滞在したが、やはり完治しなかった。足を引きずって、ようやく歩いていたが、間もなく亡くなった。彼が言った言葉が今でも頭に残っている。
「歳をとったら、運動はあきませんな。せんほうがいいですわ。今、後悔してまっせ」
もともと陽気な人だったから、そう言いながらケラケラ笑っていたが、その言葉が頭から離れることはない。
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