東芝、見えない成長戦略と進む「リスク遮断」 残る損失懸念、LNG契約の損切りを示唆

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車谷会長はNextプラン策定に向け、社内の若手から話を聞く機会を増やしているという(撮影:尾形文繁)

もっともNextプランが出されたところで、実効性のある成長戦略が示されるかは心もとない。東芝社内からは「車谷(暢昭)会長からは成長戦略を求められるが、そんな事業はない」といった嘆きが聞こえてくる。

確実にできそうなのはコスト削減策だ。銀行出身の車谷会長は4月の就任以来、「東芝はライバル企業と比べて原価率が高い」と指摘してきた。「調達改革によるコストダウンや固定費削減などできるところから進めている」と平田CFOも説明する。

調達費削減は設計変更から踏み込むとしているが、取引先への値下げ要請も避けられない。この4~6月期で収益が改善したICT事業は前期の人員削減や海外拠点の閉鎖が大きい。この先も確実に利益を上げようとすれば、縮小策頼みになる可能性が高い。

フリーポートの損切りを示唆

東芝にとって救いは、損失リスクも減ってきたことだ。

残った最大の損失リスク案件である、液化天然ガス(LNG)事業、フリーポートに関して、平田CFOは「当社のコア事業ではないと認識している。コアではないのに市況変動が激しい事業を持つのはリスク。あらゆる方策を検討したい」と説明。「損切りして撤退もありうるか」という質問にも否定はなく、「あらゆる可能性を検討する」と繰り返した。

そもそもフリーポートのリスクとはどういうものなのか。

アメリカ以外のLNGならば、通常は天然ガス田の権益とセットだ。LNG製造コストは大きく採掘費用と液化費用からなり、販売価格は原油の市場価格と連動して決められる。といっても、巨額の先行投資を必要とするLNGプロジェクトが原油相場頼みではそもそも成り立たない。このため、原価割れしない最低価格を設定した長期契約の顧客を確保した上でプロジェクトがスタートするのが一般的だ。

次ページ2月には年間100億円の損失リスクと説明
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