東芝メモリが真に「独り立ち」するための条件

ようやく船出、世界競争に勝てるか

新生・東芝メモリの方針を語る成毛康雄社長(右)と、米投資ファンド・ベインキャピタルの杉本勇次日本代表(撮影:尾形文繁)

「これまでと違うところは、投資に対する財務面での支援があることだ」「大きな会社(東芝)の中にいる本来のメリットは、メモリのビジネスが難しくなった時に支援を得られることだが、残念ながら昨今の東芝はそうではなかった」

6月4日に東芝メモリが開いた記者会見。同社の成毛康雄社長の言葉からは、「独立」を喜ぶ心情がすけて見えた。

東芝の半導体メモリ事業を分社した東芝メモリ。米投資ファンド、ベインキャピタルが主導する企業連合による買収手続きが6月1日、ようやく完了した。売却後に東芝が再出資するが、東芝の出資比率(普通株の議決権ベース)は約4割に低下する。「3年以内のIPO(株式新規公開)を目指す」(成毛社長)。

過去5年間の平均営業利益率は30%弱

これまで幅広い事業を営む総合電機の中で、メモリ事業が欲するタイミングで巨額投資を実行することは難しかった。東芝に限らず、巨額投資の遅れが、かつて世界で覇権を握ったDRAM(半導体メモリの一種)事業で敗退する要因となった。東芝にしても自らが発明したNAND型フラッシュメモリでも後発の韓国サムスン電子に大きくリードを許す一因になった。

東芝グループのさまざまな技術を使えるというメリットもあるが、2015年の不正会計発覚と2016年末の米原子力事業の巨額損失による経営危機によって、東芝内であることのデメリットが強まっていた。

成毛社長は、現在主流となっている三次元構造のNAND(以下、3DNAND)を初めて発表したのは東芝だったなどと技術的優位性を強調。そのうえで、「スマートフォンやデーターセンター用の記憶装置として市場が急拡大している」と話し、「東芝メモリは過去5年間、平均営業利益率30%弱という収益性を誇っている」と説明した。完成間近の三重県四日市の新工場や来月着工する岩手県の新工場など、今後も毎年数千億円規模の投資を継続していく方針だ。

もっとも、独立した東芝メモリが企業価値を向上させていくことは簡単ではない。

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