東芝メモリが真に「独り立ち」するための条件 ようやく船出、世界競争に勝てるか

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ほかの火種も残っている。日本の政府系投資ファンドの産業革新機構(INCJ)と政府系金融機関の日本政策投資銀行(DBJ)による出資の是非だ。

両社は「将来的な資本参加を検討する意向を表明」している。もともと日本に半導体産業を残したい経済産業省の意向から両社の出資が検討されたが、東芝とメモリ事業で提携する米ウエスタンデジタル(WD)による売却差止め訴訟を嫌い、INCJもDBJも出資を見送った経緯がある。

成毛社長は「半導体メモリの技術力ではトップレベル」と自負する(撮影:尾形文繁)

結局、WDとの係争は解決したが、INCJとDBJの出資は決まらないまま現在に至っている。これについてベインキャピタルの杉本勇次日本代表は「(INCJとDBJとの)協議は始まっていないし決定した事実はない。迅速な意思決定、経営判断が重要」と述べるにとどめる。

新体制では、議決権ベースで東芝(40.2%)とHOYA(9.9%)が過半数を確保。転換権のある優先株を除くという注釈付きながら、日の丸半導体という形は守った。日本の半導体を残すという意味でのINCJやDBJの出資の意味は薄れた。そもそもいまや東芝の外国人持ち株比率は7割を超える。何が「日の丸」なのかわからない中で、INCJやDBJから出資を受け入れると、迅速な経営判断が後退することになりかねない。

東芝からの役員はゼロ

執行体制は成毛社長以下、これまでの東芝メモリの幹部が担う。取締役は杉本氏らベイン出身の3人、成毛社長、HOYAの鈴木洋CEOの計5人。この構図から執行は東芝メモリに自由度があり、ガバナンスはベインの主導が読み取れる。

反面、大株主である東芝からの取締役がいない。資本面から見るとやや奇異に思える取締役構成は、平時においては迅速な経営判断にマイナスとはならないだろう。ただし、SKに対してと同様、増資を伴う資金調達の必要性が出た場合にどうなるか懸念が残る。

「日本の独立した企業として上場したい」(ベインの杉本氏)。そのためには資本構成の前に、日本に拠点を構える現行の事業体制で技術力を磨き、かつ巨額の設備投資を毎年継続していく必要がある。つまり、本業で勝ち残ることでのみ、東芝メモリは「真の独立」を守ることができるのだ。

山田 雄大 東洋経済 コラムニスト

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やまだ たけひろ / Takehiro Yamada

1971年生まれ。1994年、上智大学経済学部卒、東洋経済新報社入社。『週刊東洋経済』編集部に在籍したこともあるが、記者生活の大半は業界担当の現場記者。情報通信やインターネット、電機、自動車、鉄鋼業界などを担当。日本証券アナリスト協会検定会員。2006年には同期の山田雄一郎記者との共著『トリックスター 「村上ファンド」4444億円の闇』(東洋経済新報社)を著す。社内に山田姓が多いため「たけひろ」ではなく「ゆうだい」と呼ばれる。

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