東芝メモリが真に「独り立ち」するための条件 ようやく船出、世界競争に勝てるか

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大型の設備投資が続く四日市工場(撮影:梅谷秀司、2017年10月)

NANDでトップのサムスン電子が世界シェアの約3分の1を握るのに対し、2位とはいえ東芝メモリはその約半分にとどまる。サムスンは売上高25兆円、営業利益5.9兆円。半導体部門だけでも売上高15兆円、営業利益3.7兆円(2017年)を誇る。その圧倒的な資金力で投資競争をリードする。

国家を挙げて半導体産業の育成を急ぐ中国はNANDでも巨大工場を建設中。韓国や日本から半導体技術者をかき集めて追撃してくる。

「迅速な経営判断」がカギを握る

成毛社長はサムスンについて「(東芝メモリは)技術力では十分にトップレベルで、一部凌駕すると思っている。が、製造のキャパシティ、ボリューム感ではなかなか追いついていない」と分析。中国勢についても「NANDの技術開発は難しくなっている。単純にコピーすればできるレベルではなくなっている」としたうえで、「先々脅威となる可能性はあるので注視していく」と警戒感をあらわにした。

競争に勝ち残っていくには最先端の技術開発と量産投資で遅れを取るわけにはいかない。そのためのキーとなるのが「迅速な経営判断」である。

ただ、新体制でどこまで迅速な経営判断が可能かは不安が残る。投資スキームが複雑で誰が主導するのか見えにくいためだ。

東芝メモリの新たな出資者はベイン、東芝だけでなく、韓国の半導体大手SKハイニックス、日本のHOYA、アップルやデルなど米国4社が名を連ねる。そのスキームは複雑で、当初から議決権を持つ普通株、将来的に普通株への転換権がある優先株、転換権のない社債型優先株(米国4社が該当)が入り交じる。

当面、主導権を持つのはベインということになっているが、金額的にもっとも拠出が多いのはSK。明確な説明はなされていないが、SKが出す資金の約3分の1は転換社債で残りは優先株と見られる。

その点でSKは潜在的な最大出資者だが、今後10年間、東芝メモリに対する議決権を15%以下に抑えるという契約がある。今後こうしたねじれが、増資による資金調達の足かせとなる可能性もある。

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