東芝、最高益更新でも見えない「再建の道筋」 宙に浮くメモリ売却、他の事業は課題多い

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2018年3月期決算を発表する車谷暢明会長(左)と綱川智社長。出番は冒頭の数分間だけだった(撮影:尾形文繁)

「えー、綱川でございます」

5月15日の決算発表の席で、東芝の綱川智社長はいつものように淡々と切り出した。ただ、心なしか徐々に声のトーンが力強くなっていった。「これまでステークホルダーの皆様には大変ご心配をおかけしましたが、危機的な財務状況は解消することができました」。

2018年3月期は売上高3兆9475億円(メモリ事業の非継続化に伴う遡及修正後の前年同期比2.4%減)、営業利益640億円(同21.9%減)、純利益8040億円(前年は9656億円の赤字)。純利益はなんと過去最高だった。

昨年12月に実施した6000億円の第三者割当増資と合わせると、株主資本は2018年3月末で7831億円のプラスとなり、同比率は17.6%となった。しかも、子会社の東芝メモリの2兆円での売却はまだ完了していない状態で、である。

利益を引き上げた”非継続事業”

テクニカルな要素が多すぎて、東芝の業績は非常にわかりにくい。大まかにいえば、メモリ以外の事業は利益率がほぼ低位横ばい。営業減益となったのは、前年度(2017年3月期)に行っていた賞与減額などの緊急対策を縮小したことが最大の要因だ。

それでも純利益が膨らんだのは、非継続事業の利益拡大と税金負担の軽減によるものだ。

米国会計基準では、非継続事業の利益は純利益だけに影響する。非継続の扱いとなったメモリ事業は、スマートフォンやデータセンター向けの伸びと三次元化による原価低減で大きく利益を伸ばした。メモリ事業の税引き前利益は4657億円に達した。

加えて、子会社だった米原子力会社ウエスチングハウス(WH)向けの債権売却益(税引き前利益)が2562億円と貢献した。WHは経営破綻に伴い前期に損失計上していた(簿価を落としていた)ため、債権の損切りが会計上の利益となってはね返った。WHの再建売却益も非継続事業だ。

そしてそれらの税金が大幅圧縮された。3月末にWHの再生計画が米国司法で認められたことと、WH向け債権を売却したことで、前期までの会計上の損失の一定額が税務上の損失として扱われるようになったためだ。これも純利益を大きく押し上げる要因となった。

つまり、最高益といってもあまり威張れる内容ではないのだ。

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