東芝「再スタート」でも積み残した大きな課題 車谷新CEO「メモリ売却に努力を続ける」

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4月、東芝の会長兼CEOに就任した車谷暢昭氏。就任に合わせ記者団とのインタビューに応じた(写真は2月の就任会見時のもの。撮影:今井康一)

「メモリ事業の株式譲渡契約締結は、本日時点で前提条件である一部の競争法当局の承認状況の確認ができていない。早期の譲渡完了を目指して努力していく」

元三井住友銀行副頭取で、4月1日に東芝の会長兼CEOに就任した車谷暢昭氏は記者団にそう説明した。

昨年12月の第三者割当増資とその資金を活用し、米ウエスチングハウス(WH)関連の税務上の損金確定処理を行ったことで税負担が軽減したため、最大の懸案だった3月末までの債務超過は解消できた。

「スタートラインに立てた」(車谷CEO)という東芝にとって、積み残した課題が半導体メモリ子会社、東芝メモリの売却である。

東芝に契約解除権が発生

東芝メモリを米投資ファンド、ベインキャピタルが主導する企業群へ2兆円で売却する契約を結んだのは昨年9月28日のこと。利益の9割超を稼ぎ出す、文字通りの稼ぎ頭の事業を分社・売却したのは、債務超過の解消のためだ。しかし、中国当局の承認が得られておらず、目標としてきた3月末に売却を完了することができなかった。

前述の手法により、3月末の自己資本比率は10%台まで回復しており、現状では売却遅れで東芝が困ることはない。にもかかわらず、売却完了時期に神経をとがらせるのは”外野”が騒がしくなっているからだ。

収益力が高い東芝メモリを手放した後、残った東芝の収益力は心もとない。昨年東芝の増資に応じたファンドの一部は売却に対して反対を主張している。債務超過を解消できた以上、東芝社内でもそうした意見がなくはない。

契約では、株式譲渡が実行されないまま2018年3月31日を経過した場合、売り主である東芝に契約解除権が発生する(6月30日を過ぎると買い手にも解除権が発生する)。つまり、東芝は売却契約を解除できるポジションにある。

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