東芝「再スタート」でも積み残した大きな課題 車谷新CEO「メモリ売却に努力を続ける」

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売却すれば、ベインのサポートも含めて東芝メモリが独自で資金調達していくため、東芝はこうした資金負担の心配をしなくてよくなる。さらに売却益を約1兆円得られるため、自己資本比率は30%前後まで改善する見込みだ。

スマートフォンやビッグデータ需要で近年、メモリ価格は高止まりしている。他方で、新工場の稼働やプロセスの世代交代(過去は回路線幅の縮小、現在の3Dメモリでは層数の増加)が進めば、供給量が一気に増える可能性もある。

一旦、メモリ需要の増加ピッチが鈍れば市況が急落するリスクが残る。売却をしないで東芝メモリが大赤字に陥った場合、今度こそ東芝の進退は窮してしまう。このリスクも一定以上切り離せる。

リスクを抱え高収益を狙うか

対して、売却を撤回すればどうか。足元の利益水準が続くならば、東芝は4000億円程度の営業利益を乗せられる。これは明らかなメリットだ。

反面、自己資本比率は10%台のまま、毎年の投資資金を用意しなければならない。ボラティリティ(変動率)の高いメモリ事業のリスクも抱え続けることになる。加えて、契約を破棄したことによる信用のさらなる毀損は起こりえる。

綱川智COO(右)とともに、新生東芝をどう描いていくか(撮影:梅谷秀司)

結局、どちらが正しいかは何を重視するかで異なってくる。

記者は東芝メモリが総合電機の傘から出た方が、経営判断が速くなり競争上プラスと考えているが、東芝の株主にとって売却成立がプラスかはわからない。

いずれにしろ、当分は中国当局の承認を待つしかないのが現状だ。メモリがどうなろうと、東芝がその他の事業を立て直す必要があることは間違いない。

車谷CEOが5月の決算から早いタイミングで公表するとする短中期の収益改善プラン、年内をメドに策定するという中長期的なビジネスモデルの変革プランがどういったものになるのか。

東芝が復活できるか、その判断を下すのはもう少し先になりそうだ。

山田 雄大 東洋経済 コラムニスト

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やまだ たけひろ / Takehiro Yamada

1971年生まれ。1994年、上智大学経済学部卒、東洋経済新報社入社。『週刊東洋経済』編集部に在籍したこともあるが、記者生活の大半は業界担当の現場記者。情報通信やインターネット、電機、自動車、鉄鋼業界などを担当。日本証券アナリスト協会検定会員。2006年には同期の山田雄一郎記者との共著『トリックスター 「村上ファンド」4444億円の闇』(東洋経済新報社)を著す。社内に山田姓が多いため「たけひろ」ではなく「ゆうだい」と呼ばれる。

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