部員130人、広陵野球部の強さ支える補欠の力 スターいなくても再び甲子園出場決めた名門

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べンチ入りしていても試合に出られないキャプテンは何をしたのか。

背番号18のキャプテン・岩本は試合中もグラウンドの外でも、選手たちの動きに目を光らせた。レギュラーが気の抜けたプレイや態度を見せたときには叱咤し、落ち込んだ部員がいればさりげなくフォローに回った。

彼のキャプテンシーによってチームはまとまり、中村は自分のプレイに集中できた。おかげで、夏の甲子園では決勝まで勝ち上がれたのだ。岩本の出場試合は1試合もなかったが、彼の貢献を誰もが認めている。

現在、上武大学野球部に所属する岩本はこう振り返る。

「中井先生にキャプテンに指名されたあと、『これまで一番悔しい思いをしてきたのはおまえやろ? どういう思いで野球をしとるのか、全員に浸透させろ』と言われました」

キャプテンを受諾した岩本はすぐに中村のところに向かった。

「奨成がキャプテンを下ろされて落ち込んでいたので、『オレに技術がないのはわかっとるやろ? おまえが試合ではゲームキャプテンとして、技術でチームを引っ張ってくれ』と言いました。僕はチームをひとつにすることだけを考えるようにしました。

チームがまとまったのは、ミーティングを増やしたからです。僕たちは日本一になるために、日本一のミーティングをしようと思いました。どの高校よりも真剣にチームのことを考えて、熱く、深く語り合いました。ひとつのテーマを掘り下げて掘り下げて、みんなの意見をひとつにまとめて、それを練習でぶつけました」(岩本)

「補欠の力」を結集して勝ち取った準優勝

決勝戦で花咲徳栄(埼玉)に敗れ、初めての夏の甲子園優勝はかなわなかった。しかし、チーム全員の思いと「補欠の力」を結集して、準優勝を勝ち取ったのだ。

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「控えの選手は、レギュラーが頑張らないと勝てないことがわかっています。だから、あえて厳しいことを言う。上辺だけではなくて、本当に言いたいことを言い合えた仲間でした」(岩本)

広陵の今年のメンバーには、中村のようなスターも、180センチを超える選手もいない。初戦で、激戦の東東京大会を勝ち抜いた二松學舍大付と対戦する。

今回も、背番号10のキャプテン・猪多善貴が中心となって、「補欠の力」を結集した熱い戦いを見せてくれるはずだ。

(文中敬称略)

元永 知宏 スポーツライター

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もとなが ともひろ / Tomohiro Motonaga

1968年、愛媛県生まれ。立教大学野球部4年時に、23年ぶりの東京六大学リーグ優勝を経験。大学卒業後、ぴあ、KADOKAWAなど出版社勤務を経て、フリーランスに。直近の著書は『荒木大輔のいた1980年の甲子園』(集英社)、同8月に『補欠の力 広陵OBはなぜ卒業後に成長するのか?』(ぴあ)。19年11月に『近鉄魂とはなんだったのか? 最後の選手会長・礒部公一と探る』(集英社)。2018年から愛媛新聞社が発行する愛媛のスポーツマガジン『E-dge』(エッジ)の創刊編集長。

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